しばしば混同されるほどによく似た魚として知られる「カレイ」と「ヒラメ」。しかしその用途は互いに全く異なるといっても過言ではありません。
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「カレイ」と「ヒラメ」の見分け方
突然ですが皆さん「カレイ」と「ヒラメ」の区別、できますか?
この2つの魚はいずれもカレイ目に属し、体の一面を水底にペタっと付けた状態で暮らしています。そのため体の半面が茶色くてもう半面が白いという非常に変わった特徴を共通点として持っており、しょっちゅう混同されています。
そんなそっくりな2つの魚ですが多少魚に詳しい方なら「左ヒラメに右カレイ、でしょ?」とおっしゃるかもしれません。この有名な格言は、これらの魚を普通の魚と同じように「背が上、腹が下」に来るようにまな板に置いた時、頭が左を向くのがヒラメ、右を向くのがカレイとなることに由来します。
ヌマガレイなど一部の例外はありますが、基本的にはこの方法でこれらの魚を区別するのがもっとも簡単でしょう。
調理法も全く違う
そんな互いによく似た魚であるヒラメとカレイですが、「食材」として考えたときには実は全く違うものとなります。
ヒラメの料理として多くの人が思い浮かべるのはきっと「刺身」や「寿司」なのではないかと思います。最近は養殖が盛んなこともあり、刺身や寿司を出すお店でヒラメが用意されていないということはほぼありません。
一方でカレイはというと、とくに東日本では刺身や寿司になることは、マツカワなどの高級種を除くとあまりありません。この地域ではカレイの料理といえば煮付けや唐揚げであり、いわゆる惣菜魚の範疇です。
それぞれが代用にならない理由とは
この違いは一体なぜ生まれるのでしょうか。個人的には「肉質の差」ではないかと思っています。
ヒラメとカレイはよく似ていますが、その食性が大きく違います。ヒラメは小魚を主食とするために遊泳力が高く、ときに海底から10m以上も浮き上がって餌を追うことがあります。一方でカレイは多くがゴカイの仲間や甲殻類を餌とし、あまり動かず待ち伏せして餌を探します。
そのためなのか、ヒラメの身は筋肉質でよく締まっており、寝かすことで上品な旨味が出る一方、カレイの身は水分が多く、鮮度が落ちるとすぐに水っぽくなり、臭みも出てしまいます。これが食材としての用途の違いにもなっているのではないかと思います。
生食できるヒラメが高級魚なのに対し、惣菜用のカレイが非常に安価であることも、このことから容易に連想できます。ただし活けのカレイで作る刺身は絶品であり、マコガレイやマツカワなど生食需要があるカレイの活け物はヒラメを凌駕する高値になることもあります。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>