寿司ネタとして非常に人気の高い甘海老。しかし実は「アマエビ」という標準和名のエビは存在しません。
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甘海老というエビはいない!
寿司ネタや刺身盛りとして日本の食卓に欠かせないエビ「甘海老」。とろっとした身に強い甘みがあることからこのように呼ばれ、食べやすいこともあって老若男女に愛されています。
しかし、もし仮に魚介類の図鑑を開いて甘海老について調べようとしても、もしかしたらうまくいかないかもしれません。なぜなら「アマエビ」として図鑑に掲載されているエビはそもそも存在しないからです。
甘海老とは、身が柔らかく甘みを持つエビたちの総称。中でもとくに、やや深いところに生息する「タラバエビ科」のエビたちを指すことが多いようです。
代表的な甘海老は「ホッコクアカエビ」
このような「甘海老」たちのなかで、最も代表的と言えるのがホッコクアカエビ。いわゆる甘海老として売られているものの大部分がこのエビです。
ホッコクアカエビはその名の通り北国に多く、日本海沿岸、とくに福井県から北で水揚げが多くなっています。最近では国産だけでは需要を賄えず、ロシアやアラスカからの輸入も多くなっているようです。
ちなみにホッコクアカエビによく似たホンホッコクアカエビは日本での水揚げはなく、全量が輸入品です。安価な冷凍甘海老の多くがこのエビだといわれています。
各地の「ローカル甘海老」
これのホッコクアカエビとホンホッコクアカエビは甘海老として全国に流通しますが、これ以外にも各地でほそぼそと水揚げされている「ご当地甘海老」とでも呼べそうなものがいくつか存在します。
そのひとつが、静岡県で水揚げされるジンケンエビ。ホッコクアカエビよりも二回りほど小さく、底引き網漁で捕れるためにあまり高値が付きませんが、新鮮ならホッコクアカエビ同様に甘みが強く美味しいエビです。
似たようなものに、鹿児島県での水揚げが多いヒメアマエビというものがいます。こちらは更に小さくて水っぽさも強いですが、やはり甘くて美味しいエビです。まれに茹でたものが関東の市場にも入荷することがあり、惣菜用のエビとして扱われる庶民的な「甘海老」です。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>