最近巷で流行りのカニ料理「ケジャン」。生のカニを使った非常に美味しい料理ですが、自作する場合は注意が必要です。
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「カニのキムチ」ケジャン
冬はカニが美味しい季節。カニ鍋や焼きガニなど様々なカニ料理が連想されますが、いずれもしっかりと加熱してから食べるものであり、生で食べることはあまりありません。
しかし、世界には「生のまま食べる」カニの料理も存在しています。その代表的なものが、お隣韓国で食べられている「ケジャン」でしょう。
ケジャンは日本でワタリガニと呼ばれているガザミやタイワンガザミを、醤油ベースのタレやヤンニョムと呼ばれる唐辛子入り調味料に漬け込み熟成させたもの。日本では後者が特に知られており「カニのキムチ」として紹介されることも多いです。
生のカニはご飯泥棒
そもそも生のカニがあまり食用にされていない理由は「変質するのが早い」からです。カニは体内に分解酵素を多く含んでおり、死ぬとすぐにこれが働くため、あっという間に筋肉が分解されて腐敗に繋がってしまいます。
しかし、ケジャンはそれを逆手に取った食材と言えます。塩分の多いタレに漬け込むことで細菌の働きを抑え、腐敗を防ぎながら酵素の働きで身のタンパク質が分解され、旨味が増していきます。
熟成によってとろけたカニの身とタレの味、そして濃厚なカニミソが混ざりあった味は非常に官能的。特に白飯との相性がよく、韓国ではカンジャンケジャンを食べる際は必ず白飯を用意し、甲羅を開いたところに乗せてカニのエキスを吸わせてたべます。
自作も可能だけど……
このケジャン、折からの韓国ブームで日本における知名度も上がり、色々な場所で食べられるようになりました。作り方が簡単なこともあり、新鮮なカニを手に入れて自作するという人も増えているようです。
しかし、この「自作ケジャン」、食べる際には注意が必要です。というのも、主原料であるワタリガニは汽水域に生息することがあるのですが、汽水域に生息する甲殻類には「人食いバクテリア」と呼ばれるビブリオ・バルニフィカスやウェステルマン肺吸虫などの危険な寄生虫を持っているものがいるからです。
これらのバクテリアや寄生虫は加熱すれば全く無害になるのですが、生で食べるケジャンの場合そうはいきません。飲食店ではリスクを下げるために低温の冷凍庫で長時間凍らせて殺虫処理をしているところもありますが、自作ケジャンの場合すぐに食べてしまう人も多く、罹患リスクが上がってしまうのです。
どうしても自作したものを食べたいという場合は、できるだけ強力な冷凍庫で数日間しっかりと凍らせてから食べるようにするのがオススメです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>