正月に欠かせない食材の一つ・エビ。我が国では様々なエビが食用にされていますが、その中には「小さいけど味は他のエビに負けない」ものもいます。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
正月に「海老」が欠かせないわけ
正月、おせち料理に入っている具の中で、多くの人が最も心を躍らせるのは「海老」ではないでしょうか。市販品の場合、グレードが上がれば上がるほど海老のサイズが大きくなることからも、メインを張るものという扱いを受けているのがわかります。
そんな海老ですが、そもそもなぜおせち料理に入っているのでしょうか。その理由は「海老は縁起が良い」からです。
御存知の通り、おせち料理は「縁起物の食材・料理をたくさん入れたもの」であり、それぞれの食材に由縁があります。海老の場合、腹部が曲がっていることが「腰が曲がっているお年寄り」を想像させ、海老を食べることでそれくらい長生きできるように祈る、という意味合いがあります。
イセエビ派?クルマエビ派?
さてそんなおめでたい「海老」ですが、エビと聞くと皆さんはどんな種類のものを思い浮かべますか?
おそらく、最も多くの人が最初に連想するのは「イセエビ」ではないかと思います。大きいと体長50cm、2kgを超えることもある大型のエビで、無骨でかっこいい見た目や肉量の多さなど、誰もが口にしたいと思う超高級食材でしょう。
また他にも「クルマエビ」を連想する人も多いかもしれません。クルマエビは食用種が数多く含まれるクルマエビ科の中でも代表種に挙げられるもので、大きいと20cmを超え、その身の味の良さはイセエビより上とする人も少なくありません。
ただ最近では天然クルマエビの漁獲量は激減しており、養殖も行われていますがそちらも高級品であるため、代用として同じ科のブラックタイガーやバナメイエビが用いられることも多くなっています。おせち料理に入っているものも多くがこのいずれかのようです。
美味な「シラタエビ」
さて、知名度こそとても低いものの、これらの大型エビを味の上では凌駕するかもしれないものがいます。それは「シラタエビ」。
シラタエビは河口部や内湾の沿岸部に多く生息するエビで、見た目は川に生息するスジエビやテナガエビによく似ていますが、透明度が高く採りたては白く輝きます。
大きくても7~8cm程度の小型のエビなのですが味はとても良く、薄めの塩水でさっと茹でた「釜揚げ」で食べるとあまりの旨味の強さ、身の甘さに驚かされます。江戸前産地の一つ羽田では古くから珍重され、「ボサエビ」の名前で今でも漁獲されるほど。
河口部に生息するため生食が難しいのが難点であり、その意味で前出のイセエビやクルマエビを評価で上回ることはできないのですが、加熱して食べたときには一番美味しいエビなのではないかと思っています。河口で釣りをしていると足元の岩礁帯に群れていることがあるので、味が気になる人はぜひ掬って食べてみてください。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>