水生生物には、漁業権が指定されているために許可なく採取できないものがいくつかありますが、なかにはちょっと意外なものもあります。
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漁業権守ってますか?
海での釣りや潮干狩りといったアウトドア活動は、レベルを問わなければ誰でも気軽に始めることができ、敷居も高くありません。しかし、そこを生活の場とする人たちもいるため、あらかじめ知っておき、守らなければならないルールも存在します。
その最も大きなものが「漁業権」でしょう。わが国の海には多くの「共同漁業権」が設定されており、各海域ごとに「この海域では○○という水産物を漁獲しており、漁協組合に所属していない者が採ることを禁じる」といったようなルールが指定されています。
○○に入るものはアワビ、サザエ、イセエビなど食用水産物としてよく知られるものが多く、こういったものを漁業組合員以外の人間が許可なく採取すると「漁業法違反」という罪で検挙されます。いわゆる「密漁」です。
密漁するとどうなるの?
密漁は漁業者に対して直接的に経済損失を与える行為なので、厳しく取り締まられます。
一般的に、漁業権を侵害したものは100万円以下の罰金刑が科せられます。以前は20万円以下でしたが、近年の密漁悪質化により罰則が強化されました。
また、とくに密漁被害が大きいシラスウナギ、アワビ、ナマコについては特定水産動植物というものに指定されており、これを密漁すると「3年以下の懲役または3000万円以下の罰金もしくはその両方」という非常に大きな刑罰が科せられます。
さらに禁止道具の使用や禁止されている漁法で密漁を行うと、自治体ごとに指定の「漁業調整規則」に違反した形になり、こちらの罰則も科せられます。
これらの刑罰を受けると当然ながら「前科」がつく形になり、その影響は一生涯に及びます。いかなる理由があれ「ワリに合わない行為」だと言えるでしょう。
これも密漁に!?「えむし」ってなにもの?
知らないうちに密漁犯にならないためには、海でハントを行う前に「その海域の漁業権指定状況を確認する」というのが最も確実です。簡単なのは自治体に電話やメールで確認することで、ハントを行う場所を伝えればそこで漁業権が指定されている水産物を教えてもらえます。
さて、そのようにして漁業権指定魚種を確認していると、多くの場所で漁業権の指定があるものの、その正体がいまいちわからないというものにぶち当たります。その代表が「えむし」です。
これは漢字で書くと「餌虫」。魚釣りの餌に用いられる「虫エサ」ことゴカイ、イソメ類を指します。今でこそ海外からの輸入品が多くなっている虫エサですが、かつては各地で専門の漁師が漁獲していたため、指定が残っているのです。
釣り人の中にはより良い餌を求め、自分でゴカイ類を採るという人も少なくありませんが、漁業権で「えむし」が指定されている海域では行わないほうが無難でしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>