水中を泳ぐ魚と大空をはばたく鳥、縁遠いように思えますが、「鳥に由来する名前」を持っている魚は意外にもたくさんいます。
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イサキは漢字で書くと「鶏魚」
初夏に旬を迎え始める高級魚・イサキ。とくに梅雨前後に美味しくなるのですが、それが麦の収穫期と重なることから、旬のイサキを表す「麦わらイサキ」という言葉もあります。
そんなイサキですが、漢字ではどう表記するのかご存じでしょうか。意外にも「鶏魚」と書きます。鶏にイ、イサなどの読み方はないので、これは熟字訓の一つと言え、知っていないとまず答えられないためにしばしば雑学クイズのネタにされています。
このように表記される理由として「味が鶏に似ているから」という説がありますが、個人的にはあまりそうは思いません。一方「背びれのシルエットが鶏のとさかに似ているから」という説もあり、こちらは多少納得できそうです。
意外といる「鳥の名がつく魚」
このイサキはやや特殊な例ですが、魚の名前で鳥の名がつく、あるいは鳥に由来するものはいくつかあります。
例えば「ツバメウオ」。幼魚のうちは背びれと尻ビレが大きく天地に張り出し、ツバメが羽を広げたように見えるのが由来です。
「カラスガレイ」というものもあります。こちらは色合いがカラスのように黒いことから名づけられた安直な名前です。素直に色名でよかったのではないかとも思いますが、クロガレイ、クロガシラガレイなどがすでにあることから、混同しないようにしたのかもしれません。
このほか、鷹の羽のような模様があることから名づけられた「タカノハダイ」、雀のように数多く群れることが由来とされる「スズメダイ」などがいます。
トビエイは「飛びエイ」ではない!?
さて、このような「鳥の名前に由来する魚名」のなかには、ちょっと意外に思えるものもあります。それは「トビエイ」。
エイの中の1グループであるトビエイ目は、水族館で人気のマンタなども含んでおり、大きなヒレを羽ばたかせて水中を優雅に泳ぎます。そのため「飛びエイ」であると思われがちです。
しかし実際は漢字で書くと「鳶エイ」。その体色がトビ(トンビ)に似ているのが由来だそうで、これも実は鳥に由来する名前だと言えます。
ちなみにエイを漢字で書くと「海鷂魚」。海にいる鷹のような魚、という意味になり、こちらも鳥の名前に由来します。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>