ほぼ時期を同じくして漁が解禁される、深海性の2つの小さなエビ。今年は今のところどちらも豊漁のようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
駿河湾でサクラエビが豊漁
今月5日、駿河湾の名産品として有名な「サクラエビ」の初競りが、静岡県静岡市の市場にて実施されました。
今年のサクラエビ漁の初日の水揚げは約40tとなりましたが、これは昨年の春漁期合計の水揚げであった0.9tの40倍以上の数値です。1ケース(15kg)あたりの平均取引値は約33,000円ほどとなり、こちらも昨年からは5万円近く安くなっています。
実はここ数年、サクラエビは極端な不漁に襲われていました。今年のサクラエビ漁も始まるまでは好漁を悲観視する声が多かったのですが、ふたを開ければこのような結果に。長期の自主禁漁など懸命の対策が功を奏したのかについてはまだ分からないのですが、関係者は一旦胸をなでおろしたことでしょう。
富山湾の「シロエビ」も解禁
太平洋側の駿河湾でサクラエビ漁が解禁された一方、今月1日には、日本海側の富山湾の特産である「シロエビ」の漁も解禁されています。
標準和名はシラエビですが、流通上はシロエビとして知られるこのエビ、富山湾を代表する海の幸のひとつで、近年は都心でも刺身などで食べることが可能です。
初日の水揚げ量はおよそ8tとなり、これは例年の2倍ほどの量。過去40年の中でもっとも豊漁であったといいます。シロエビ漁は例年6月ごろに最盛期を迎え、11月まで続くロングランとなります。
サクラエビとシラエビの共通点
サクラエビとシラエビは漁場こそ異なるものの、いくつか共通点があります。
まず、いずれもやや深い海で漁獲される小型のエビであるという点。サクラエビが獲れるのは日本で最も深い湾である駿河湾で、シラエビが獲れるのもまた日本屈指の水深を誇る富山湾です。
またこれらの種にはいずれも「日周鉛直運動」という行動が見られます。日中は水深200~300mほどの海底に生息していますが、夜間は数10~100mほどの浅場に浮上し餌のプランクトンを追います。これを毎晩繰り返しているといわれています。
ちなみにサクラエビは富山湾にはいないですが、シラエビは駿河湾にもいるそうです。ただしサクラエビ、シラエビともに、商業的に漁獲されているのは現在行われている駿河湾/富山湾のみとなっています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>