日本の秋の食卓に欠かせない「秋鮭」「サンマ」がここ数年、手の届きにくいものとなっています。今後「秋の味覚」はどうなっていくのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
岩手県でサケが記録的不漁
サケの定置網漁が盛んな岩手県で先月、サケの回遊資源量に関する衝撃的なデータが発表されました。2022年の秋以降、岩手県内に戻ってくる秋サケの数は過去最低となり、東日本大震災前の1%程度に留まるとの見通しなのだそうです。
これは「春先の海水温が高くなる傾向が続いていて、生き残る稚魚が少なくなっている」ことが理由だといいます。
また同じくサケ定置網漁が盛んな北海道根室では、産卵能力のある親魚の資源量を確保するため、操業始期から北部地区で5日間、南部地区で8日間の自主規制措置に取り組むことを決定しました。
オホーツク海のサケ・マス資源を我が国と共有するロシア国内でも、カラフトマスの漁獲量が前年同期比7割減となり、大幅な減産になる可能性が高いという予測が出ています。総合的に見れば、北大西洋西部のサケ・マス類資源量が全体的にピンチという状態が読み取れます。
今年もサンマは超レア魚に
サケと並び「日本の秋の魚」とされるサンマも、ここ数年不漁の悪化傾向が止まりません。
先月19日、根室で今シーズン初水揚げされた棒受網漁物サンマが全国の消費地で卸売販売が行われたのですが、東京・豊洲市場に入荷したのはたったの23kg。稀に見る不漁と言われた、昨年同時期の棒受網物初入荷時の3分の1未満です。当然値段も高騰し、昨年の2倍値となる6万円/kgの超高値をつけました。
名古屋の市場に先月29日に入荷した道東産のサンマも、例年1000ケースほど入荷があるところ、今年は200ケースほどにとどまりました。サイズも小さく、以前なら別の漁の餌に用いられるようなものだといいます。
サンマの棲息に向く海域の適温は14℃とされていますが、近年日本近海のサンマ漁場の水温が20℃ほどまで上昇しており、それが不漁につながっているとみられています。
変わっていく「秋の味覚」
長引く不況で消費者のマインドも変わる中、採れなくなって高騰したこれらの「秋の味覚」は手が出にくくなり、それに代わるものが求められる時が来ると思います。
現時点で、その筆頭候補となるのはブリでしょう。今や日本全国で大量に水揚げされるようになっており、かつてほとんど水揚げのなかった北海道でも、今ではサケ用の定置網に大量に入るほどになっています。北海道産ブリは品質も良くなっているようで、今後道産ブリが全国の市場に入荷するようになると見られています。
ほかにはサワラも良い候補となるかもしれません。かつて日本海側ではさほど獲れなかったサワラだが、近年では9~10月を中心に水揚げがとても多くなっています。魚編に春と書くサワラの旬は春と思われがちですが、産卵期を迎える春より秋のほうが身そのものは美味しいと言われています。
脂の乗ったジューシーな味わいは秋の魅力そのものです。現時点では西日本が中心のサワラ生食文化も、今後は全国的なものとなっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>