天竜川水系で「ザザムシ漁」解禁 見た目クセ強めでも味はクセなく美味?

天竜川水系で「ザザムシ漁」解禁 見た目クセ強めでも味はクセなく美味?

長野県を貫流する中部日本有数の大河・天竜川。ここでは12月になると、とある「珍味」が漁獲されることをご存知でしょうか。

(アイキャッチ画像提供:茸本朗)

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天竜川水系でザザムシ漁が解禁

長野県の中央にある諏訪湖に源を発し、南流して太平洋に至る日本有数の大河・天竜川。その水系で今月1日に「ザザムシ漁」が解禁されました。

解禁日の天竜川漁協組合管区内では、漁の許可を受けた漁協の組合員が、下流に置いた四つ手網に向かって上流の川底をかき回し、石の表面に生息する「ザザムシ」を捕っていました。今年は長雨で川が増水し、ザザムシが流された場所もあったそうですが、その後は水量が安定し、順調に生育したと見られるそうです。

ザザムシは一時は消費が落ち込み、漁師の自家消費用にとどまることも多かったようですが、最近では「昆虫食ブーム」により需要は高まっているといいます。(『天竜川水系 「ザザムシ漁」解禁』長野日報 2020.12.2)

ザザムシとは

漁師によって漁獲される「ザザムシ」ですが、魚類ではありません。これは川の中に棲息する「川虫」と呼ばれる水生昆虫たちの、当地における総称です。

天竜川水系で「ザザムシ漁」解禁 見た目クセ強めでも味はクセなく美味?調理された川虫(提供:茸本朗)

ザザムシにはカワゲラやトビケラ、ヘビトンボという種類の虫たちが含まれます。これらの昆虫は幼虫期には川の中の石の裏などで暮らすという特徴的な性質を持ちます。変態し成虫になると、他の昆虫同様陸上に出て飛び回り、交尾相手を探すのです。

ザザムシは川魚たちの格好の食料となるため、釣りの餌としては非常にポピュラーです。しかし人間のご飯にもなるというのは、現在では伊那谷だけとされています。

気になる味は?

伊那谷だけのグルメとも言えるザザムシは、他の地域の人にとってはなかなか縁遠い存在です。ただその中でも「最もポピュラーなザザムシ」といえる「くろかわむし」ことヒゲナガカワトビケラは、長野県の観光地でしばしば缶詰が売られているため、一般人でも簡単に試食することができます。

天竜川水系で「ザザムシ漁」解禁 見た目クセ強めでも味はクセなく美味?ザザムシの缶詰(提供:茸本朗)

ザザムシはほとんどの場合佃煮にされており、濃いめの味付けがなされているため、多くの人がイメージするであろう「ゲテモノ」的な印象は全くありません(形は虫そのままなので、見た目でどうしてもダメという人はいるかも知れませんが)。

匂いにもクセはなく、噛むと口の中に脂の強さからくる強いコクが広がります。例えるなら一度唐揚げにした小魚を佃煮にしたような感じで、日本酒によく合う味と言えます。

一缶1,000円程度とやや値は張りますが、見かけたら試してみるのも悪くないと思いますよ。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>