世界中で数を減らしているウナギの稚魚(シラスウナギ)。日本以外でもその価格の高騰に苦しんでいる地域があるのですが、そこではとある食材が「シラスウナギの代用品」として活躍しています。
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春の風物詩「シラスウナギ」捕り
筆者の住んでいる神奈川県では、毎年冬~春にかけて川の河口で大きなライトを炊き、大きなタモ網を片手に海面をじっと見つめる人たちの姿が多く見られます。彼らが狙っているのは「シラスウナギ」とよばれるニホンウナギの稚魚。河川を遡上するために河口に集まってきたものをタモ網で掬い、生きたまま養殖業者に卸すのです。
日本人が最も愛している魚のひとつと言っても過言でないウナギですが、その生態には不明点も多く、完全養殖(人工で育てた親が産んだ卵をふ化させ、成魚まで育てること)の実用化にはまだ至っていない状況です。したがって現状はシラスウナギが手に入らない限り、ウナギの養殖を行うことはほぼ不可能なのです。
シラスウナギの漁獲量減少
このニホンウナギのシラスウナギ、ここ数年非常に数を減らしており、ニュースでもしばしば取り上げられるようになっています。2020年は前年度の90倍近い量のシラスウナギが獲れており「V字回復か?」とも言われていますが、しかしこのペースで捕り続けることができたとしても、2017年と同等の漁獲量に過ぎず、過去の漁獲量からするとまだまだ低水準と言わざるを得ない状況です。
ニホンウナギの減少に対し、日本の水産業者は別種のウナギを使って埋め合わせを行ってきました。その代表がヨーロッパウナギで、ヨーロッパから輸入したウナギを中国の養鰻池で生育し、加工して日本国内に流通させたのです。そのことによる負の影響は大きく、平成20年にはヨーロッパウナギは絶滅危惧種ⅠA類に指定され、翌年にはワシントン条約により取引が禁止されました。
このほか、東南アジアのビカーラウナギやアメリカのアメリカウナギなど、様々な種のウナギの稚魚が養殖に用いられ、その全てが数を減らしてしまっています。
シラスウナギのアヒージョ
このヨーロッパウナギ減少の煽りを大きく食らった国があります。それはスペイン。
この国では昔からシラスウナギを食材として用いており、とくに「シラスウナギのアヒージョ(アングーラス・アル・アヒージョ)」は庶民の味として人気を博してきました。しかしヨーロッパウナギがひどく減少してしまった今、取引価格はキロ数万円と高騰し、とても庶民が食べられる料理ではなくなってしまっています。
この状況に対し、スペインで最もシラスウナギを愛するバスク地方の人々は面白い方法で解決策を見出しました。それは「かまぼこ」。
代用品はかまぼこのアヒージョ
一見するとシラスウナギのアヒージョにも見えるこれは、実はタラのすり身とイカスミを使って作った「シラスウナギ風かまぼこのアヒージョ」なのです。
スペインを始めとするヨーロッパでは、日本の「カニかまぼこ」が非常に高い人気を誇っており、surimiという名前で流通しています。このカニかまぼこの製造技術を応用し、作られたのがシラスウナギ風かまぼここと「グーラ」。アングーラス・アル・アヒージョが一皿1万円以上する超高級料理なのに対し、このグラを使った「グーラス・アル・アヒージョ」はたったの数百円で楽しめるとあってあっという間に定着し、バルの定番料理となったそうです。