季節は師走。先日までの暑い気候はどこへやら、あっという間にお正月が迫ってきました。というわけで、今回は、サカナのプロが「真鯛」の目利きについて解説します。祝い事には欠かせない“祝い鯛”を食卓に迎えて、華やかな年始を彩ってみてはいかがでしょうか。
(アイキャッチ画像出展:PhotoAC)
『あやかり鯛』もたくさん
鯛といえば多くの方は、桜色が鮮やかな真鯛を思い浮かべるかと思います。ですが、日本人は古来より鯛が好きすぎるのか、おおくの“あやかり鯛”が存在しています。
ハナダイ(チダイ)
真鯛にとても似ていますが、別物の魚です。
真鯛との大きな違いは“チダイ”という名前からもわかるように、エラブタの後ろが赤く血がにじんだように見えること。
また、体長は真鯛ほど大きくならず、最大でも40cm程度の大きさで成長が止まります。
キダイ(レンコダイ)
結婚式や市販のおせちに入っているタイの正体は小さな真鯛、ではなく、キダイが多く使われています。
こちらは、ハナダイよりもさらに小さく、30cm程度の大きさです。
このほかにも、ブダイやフエダイなど多くの“あやかり鯛”が市場に多く出回っています。
ですが、それらが真鯛に劣っているのかと言われれば、絶対にそんなことはありません。
クロダイやイシダイなどは“磯の王者”とも呼ばれるほど、釣り師には人気がある魚ですし、ハナダイやキダイにしても時期によっては真鯛よりもおいしいタイミングが当然あります。
なので“あやかり鯛”は、決して鯛のまがい物などではなく、真鯛とは別物の立派な鯛の一種なのです。
と、言いつつ、お祝いの席ではやはり本家の真鯛が食べたいですよね。
真鯛の目利きポイント5選
背中の斑紋
真鯛を選ぶ際に重要なポイントのひとつは、背中に浮かぶ鮮やかなコバルトブルーの斑紋です。
鮮度の良い真鯛は星をちりばめたかのように美しい斑紋が輝いています、一方、鮮度が悪い真鯛は斑紋が薄く、良質な魚とは言えません。
鮮やかな桜色の体色
斑紋と同じく、重要視するべきは鯛ならではの桜色の体色です。鮮度のいい鯛はまさに見るだけでもおめでたい、美しい桜色をしています。
鮮度だけでなく、見た目にも鮮やかですので、お正月にはぜひ体色のいい真鯛を選んであげてください!
活〆のものを選ぶ
魚を選ぶ際に一番重要なのが、きっちりと血抜きや神経抜きといった“活〆”の処理が行われたものを選ぶことです。
たとえ、どんなに上物のブランド鯛であったとしても、この処理が行われていない状態――いわゆる“野締め(クーラーや生簀に入れて窒息死させ、死後硬直する事で〆る方法。)”の状態では、全身に血が回ってしまい、せっかくの鯛が台無しになってしまいます。
見分けるポイントは非常に簡単で、しっぽやえらぶたの周辺に処理が行われた形跡があるか、妙に死後硬直で固くなっていないか、などを目で確認が可能です。
大きさ
横綱の襲名や相撲の優勝などで見られる大きな鯛は、大味でおいしくないといわれています。
一般的には、2~3kg程度の鯛が程よく脂ものって、なおかつしつこくなく、おいしいといわれています。
ただ、祝い膳としての意味合いが強いサカナでもあります。味はもちろんですが、予算や目的に合わせたベストサイズを選ぶのがいちばんです。
天然か養殖か
天然の真鯛はやはりさっぱりとしていておいしく、とても人気があります。
一方で、養殖の真鯛は、過去にずさんな養殖をされていた場合もあり、未だによくないイメージを払拭できずにいます。
これは、ハマチなども同様なことがいえます。ですが、近年では高知県の『鯛王』や熊本県の『みやび鯛』など、養殖の真鯛にもトレーサビリティ(流通の追跡可能性)が確立された、安全で天然にも負けないクオリティの真鯛が多く出荷されています。
天然ものは確かにおいしいのですが、個体差によるばらつきが多く、実はプロでも最高のものを選び出すのには苦労します。
一方で、養殖の真鯛については一定以上のクオリティのものを、しっかりと安全に家庭やお店に季節を問わず届けることができます。
いまだに“天然もの以外は認めない”という方も多くいらっしゃるとは思いますが、そもそも魚以外、たとえば牛や豚などは牧場で飼育されるのが一般的です。
「バッファロー以外、牛とは認めん!」
という方はいるかもしれませんが、私は見たことがありません。
資源の保護を叫ばれる現代、天然だけに固執せず安全でおいしい養殖真鯛を探してみるのもいいかもしれません。
美味しい鯛の料理
おいしい鯛を手に入れたら、まずはやっぱり姿造り!
鮮やかな桜色と白身のコントラストは、見るだけでも“おめで鯛”!刺身はだしにくぐらせて、鯛しゃぶにするのもたまりません。
身を食べきったら、最後はおいしい身のつまった宝箱「カブト煮」で決まり!甘く煮付けた、ほろほろと崩れる鯛の頭の身は、もはや説明の必要がありません。
『うまい』
その一言で十分です。
見た目に鮮やか、捨てるところがなく、うまみもたっぷり、加えて春から縁起がいい。
なるほど、真鯛は日本人に古来から愛され続けるはずです。
大海を泳ぐ桜色の王者真鯛。
来年の年始めは“これだ!”と思える、至高の真鯛を選んでみてはいかがでしょうか。
<塩味鷹虎/サカナ研究所・WEBライター>