多くの人にとって自分の暮らしとは無関係と思われがちなヒトデ。しかし実は「農業現場」で役に立っていました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ヒトデが害獣防止に役立つ
星型という目立つ見た目をしていながら、人目につかない海底でのんびり暮らしているヒトデ。食用にする地域もありますがごく一部で、ほとんどの人にとってその存在は「知っているけどかかわることがない」というものかと思います。むしろアサリやホタテを食害する有害生物として駆除されることのほうが有名でしょう。
しかし、そんなヒトデは実は人知れず、われわれの暮らしの役に立っています。というのも近年、ヒトデから作った「害獣忌避剤」が売れているからです。
ヒトデが害獣除けに!?(提供:PhotoAC)ヒトデは体内にサポニンという成分を持っており、これを動物が口にすると強いえぐみやしびれを感じます。またヒトデの死骸は非常に強い悪臭を持ち、嗅覚の発達している動物にとっては近寄りがたいものです。
これらの点を活用し、ヒトデを発酵させ刻んだものや、エキスを濾したものが害獣忌避剤として市販されています。これを動物が近寄ってほしくない場所に撒けば入ってこなくなるのだそうです。
害虫発生防止にも
このサポニンが効果を持つのは鳥獣だけでなく、昆虫の忌避剤としても役に立ちます。この作用を生かし、かねてからヒトデは「害虫忌避剤」として使用されてきました。
様々なヒトデ(提供:PhotoAC)有名なのは汲み取り式の便所、いわゆるボットン便所に刻んだヒトデを投入しておくというものです。ヒトデから出たサポニンが周囲の環境に溶け込むとそれがウジ虫の発生を抑制するためハエが発生しにくくなるのです。
これを応用し、畑に漉き込んで畑地害虫の発生を抑える農薬も開発されています。ヒトデのサポニンは動物には悪影響を及ぼしますが植物にはそのようなことはなく、そこで育った野菜を我々が食べても何の問題もないのだそうです。
なんと肥料にもなる
害獣や害虫の忌避剤になるだけではなく、なんとヒトデは肥料にもなるといいます。といっても特定の植物を成長させるというより、いろいろな植物が育てやすくなるような「土壌改良」のための資材になるそうです。
ヒトデの殻は多孔質(提供:PhotoAC)ヒトデの殻は非常に細かい穴がたくさん開いているような構造となっており、これを土中に漉き込むことで土の保水力が向上します。またその穴が空気の通りを良くしたり、微生物の巣になったりすることで作物の生育に好影響を与えます。
またそもそも海中で大量のミネラルを蓄積しているため、土中の栄養素を豊富にする効果も期待できるそうです。このように、ヒトデは人知れず我々の暮らしを支える存在なのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

