渓流餌釣りでは、実に様々な餌を使用する。季節に合わせ、その時に現地で採れる餌を使用するのが基本となるが、水量や攻める場所によって使い分けると、より良い釣果を得やすい。今回は、渓流餌釣りで使用する「餌ごとのアワセのタイミングの違い」についてフォーカスしてみたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)
アワセのタイミングが違う?
まずは、前提となる条件を詳しくみていこう。そして「何故アワセのタイミングの違いにフォーカスする必要があるのか」を紐解いていく。
咥える時間を想定
渓魚は餌を咥えた際に違和感があると餌を吐き出してしまうのだが、その時間は大変短く、およそ0・1秒とされている。仮にこの時間を少しでも長く出来るならば、フッキングの確率がアップするというのが今回のキモだ。
実際に、流し方や使用する餌により、この「餌を咥える時間」がある程度変わる事を著者は確認済みだ。
渓魚は早食いだ(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)季節を考慮
活性が高い時は比較的長めに餌を咥えているように感じられるが、スレている時は本当に一瞬で、軽く口先で触るだけの事もあるように思う。解禁直後等の低水温期も同様に短い。従って、スレている時や低水温の時は、食い込みの良い餌=咥えてから間持ちする餌が強いように思う。
水量と攻め場所を考量
深場の一級ポイントには多くの渓魚が着くため、競争が激しい状態だ。こういった場所では一度咥えた餌をしっかり食い込むことが多く、比較的遅アワセでも掛かるように感じる。逆に浅い場所、1匹しか定位できないような場所では一瞬で見切られることが多いので、出来るだけ早くアワセを入れる必要がある。
目安時間を算出
以上の条件を踏まえて、ざっくりとした指標として目安時間を算出していく。0・1秒を下回る事は無いと仮定し、逆に1秒以上経ったうえで掛かる場合は向こうアワセ(もしくは偶然)のため除外する。
高活性・深場ポイント・魚影の濃い場所・食い込みの良い餌では咥えている時間を+0・1秒とし、低活性・スレッカラシ・浅場や狭いポイント・小さめの餌では-0・1秒とする。さらに、綺麗に流せた時は体感で+0・2秒としても十分に掛かる印象だ。
即アワセが基本の餌
ではここから実際に、著者がこれまでの渓流釣りで得た経験から、「即アワセ(0・1秒)が必要だ」と感じた餌を紹介しよう。
ヒラタ
大変薄い体で柔らかく、かつ最大でも1・5cmに満たないサイズ。非常に脆い事もあり、食った瞬間にアワセるのが基本となる。反面、食い込みが大変良い餌でもあるので、0・2秒程度のアワセが理想となるが、高活性であったり綺麗に流せた場合は、多少遅れてしまっても十分に掛かる。
こちらがヒラタ(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)イクラ
釣り餌で使用されるイクラは基本的に塩締めされたものだが、渓魚が咥えた瞬間にプチッと潰れる事を考えると、即アワセが基本となる。ただこちらは匂いが強く、食い込みが良い餌でもある反面、使用するのは解禁直後の低活性の時期だ。
それらを考慮し0・2秒~0・3秒程度のアワセが目安となるだろう。ちなみに、管理釣り場や放流個体は深場に高活性な魚が放流され、かつ放流場所の魚影が濃くなるので、かなりの遅アワセでも普通に掛かる。
解禁時の特攻餌(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)キンパク・スナムシ・ピンチョロ
春先の特攻餌であるキンパク/ピンチョロと、著者が以前紹介したスナムシ(モンカゲロウの幼虫)は、この時期の渓魚達が常食しているため、食い込みが非常に良い。
ただヒラタやイクラに比べると多少殻が固めなので、上手く流せばしっかり食いついてくる印象だ。低活性の時なら~0・2秒が理想だが、高活性の時なら~0・4秒程度程度でも十分に掛かる
やや遅アワセが良い餌
次に、前項の餌と比べるとゆっくり目にアワセを入れる方が良い餌を紹介しよう。
クロカワムシ
クロカワムシは、まず餌自体のサイズが2cm程度と比較的大きい。かつイモムシの様な体型をしており、食い込むのにやや時間を要する餌だ。本流で効果があり良型が多く掛かるのだが、著者の経験上、即アワセではほぼ掛からず、ほんの一瞬送り込むと良い様に感じている。
また、5月~7月という最盛期によく使用する餌である事を踏まえ、目安時間は0・3秒~0・5秒というイメージだ。
クロカワはやや遅アワセ(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)ブドウムシ
こちらもクロカワムシと同様イモムシのような体型で、食い込むのに少々時間を要する餌。やはり一瞬送り込んだ方が綺麗に掛かる事が多いように思う。一方、渇水期に効果がある餌でもあるので、水量が通常~増水時は0・3秒~0・6秒、渇水期は0.2秒~0・4秒といった印象だ。
ミミズ
増水・濁りが入った際に、餌から出る匂いで絶大な効果を発揮するのがミミズだ。餌自体が比較的大きめのシルエットをしているが、大小さまざまなサイズがある事を考慮し、使用するミミズのサイズによってアワセのタイミングを変えるのが理想だ。
増水という高活性時に使用する事が多い餌である事も考慮し、目安となる時間は、小さめなら0・3秒程度、大きめなら~0・6秒程度。著者のこれまでの経験上、即アワセで掛かる事はほぼ無いように思う。
オニチョロ
オニチョロは大きなものだと3cm近くになり、かつかなり硬い部類の餌だ。4月や7月頃、本流での大型狙いや源流部での良型イワナ狙いで使用するオニチョロには、小型はほぼヒットしない……というか食い込めないようだ。
オニチョロ使用時のアタリは、体感では目印が上下に震えることが多いように感じるのだが、何度もガブガブとやっているのかもしれない。それらを考慮すると、少し送り込みが必要で、0・3秒~0・6秒程度が目安になるだろう。
オニチョロは硬めの餌(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)バッタ類
初夏~夏場になると、入渓までの道で容易に捕獲できるのがバッタや小型キリギリスの仲間。夏場に渓魚の胃の中から出てくることも多い。
餌としての系統がやや似ていることもあり、使用感としてはオニチョロとほぼ同じで良いだろう。
0・2秒なんて可能なのか!?
最後に、「0・2~0・6秒でアワセるなんて可能なの!?」という方の為に、著者なりの見解を述べたい。
文字数で考える
著者は音楽と「話し方」を指導する教室を経営しているのだが、一般的な方が「こんにちは」という速度はおよそ0・6秒程度で、早口な方なら0・5秒を切る事も多い。即ち、「こんにちは」の「こん」を話すくらいの速度でアワセを入れると、0・2~0・3秒程度だと考えてほしい。
スポーツやゲームで考える
陸上の100m走では、ピストル音から0・1秒未満の反応はフライングとされている。これは医学的見地から、「人間の反応の限界速度が0・1秒」とされているためだ。トップアスリートやプロゲーマーの反応速度は、これに限りなく近い0・11秒~0・2秒とされている。
であれば、渓流餌釣りのアワセは反射的な手首の動きのみなので、特訓次第で0・2秒~0・3秒で反応するのは十分に可能だと考える。
心構えが重要
ふいに来たアタリだと咄嗟の反応は難しいだろうが、「ここで食うだろうな」という予測さえしておけば、目印の動きに即反応できるもの。意識して特訓すれば、0・2秒台で反応する事は十分に可能だ。そのためには集中力を切らさず、アタリが出る場所をあらかじめ予測しておく心づもりが非常に重要だ。
ここで食うという予測が重要(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)時間を伸ばすための工夫
自身の反応速度をアップさせるのも良いが、一番の解決策は「渓魚が餌を咥えている時間を長くすればいい」のだ。そのためには状況に合わせた餌のチョイスと、何より「警戒されない流し方」をマスターすること、これに尽きる。
そうする事で、勝負できる時間が0・3秒~0・6秒くらいにまで引き延ばすことが出来るのだ。
流し方と餌でアワセは変わる
渓流釣りを始めた当初、著者は「0・2秒でアワセを入れるなんて絶対に無理だ」と感じていた。だがよく考えてみれば、本職の仕事でギターを弾く際、1秒間に8個~10個以上の音を入れるケースがザラにある事に気付いた。
そして使用する餌によってアワセのタイミングは早くも遅くもなるし、さらに綺麗に餌を流せるようになってからは、多少タイミングが遅れても綺麗にフッキングする機会が格段に増えた。
以降はアワセのタイミングを完全にマスターした印象だ。今回紹介した時間を目安にしつつ、仕掛けの流し方を工夫する事で、皆様のフッキング率がアップすることを期待したい。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>



