いまや最も知名度の高い深海生物「メンダコ」タコなので美味しく食べられるかと思いきや…?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
不思議な深海生物の世界
私ごとで恐縮ですが、筆者は先日「深海生物漁」の見学に行ってまいりました。深海漁業が盛んな静岡県戸田漁港からの出船で、水深300-400mあたりで行われる「深海トロール漁」を見せていただきました。
深海トロール漁では主に深海性のエビやタカアシガニ、「メヒカリ」の名前で知られるアオメエソがメインのターゲットとなりますが、それ以外の不思議な生き物がたくさん捕獲されます。
センジュエビ(提供:茸本朗)網揚げのときには、マニピュレーターのような長い腕を備えたセンジュエビ、鎧兜のような外殻で覆われた魚キホウボウ、貝殻がメタリックシルバーに輝くギンエビスなど、鮮魚店では絶対に見かけない魚たちが山ほど登場し、ワクワクが止まらなくなります。その中にはまだ名前のついていない生き物も山ほどおり、しばしば研究者や博物館の学芸員も漁を見学しに来るそうです。
深海生物人気No. 1「メンダコ」
そんな摩訶不思議な生物たちのなかでも、最も変わっていてかつ最も知名度の高いものといえば、おそらくメンダコでしょう。
メンダコはタコの仲間ですが、プリンのような胴体に短い8本の足がついており、海中を漂う姿はまるでUFOのよう。おまけに何の役に立つかわからない小さな耳状突起がついており、これをパタパタと動かしながら深海を浮遊するのです。
メンダコ(提供:PhotoAC)その脱力感あふれる姿は見るだけで癒されると人気で、静岡県沼津の深海生物専門の水族館では、このメンダコがいるときはわざわざウェブサイトのトップページに「今日はメンダコいます」と掲げるほど。非常に弱い生物で、海上に上げられた時には殆どの個体が死んでしまっているので、生体展示を見られるのは結構レアなのです。
メンダコ食べてみた
そんな可愛らしいメンダコですが、筆者の興味は外見ではなく「味」にありました。このメンダコ、運良く食べられた人の間では「非常に不味」「食べる価値無し」という評価がとても多いのです。
果たしてどれほどマズいのか、とりあえず生のまま切って口に運んでみましたが、ひと噛みした瞬間に後悔しました。強い生臭みに加え、清掃されていない公衆トイレのような強烈なアンモニア臭が口中いっぱいに広がり、飲み込むことができないほど。
メンダコの干物(提供:茸本朗)メンダコはまるでゼリーのようにブヨブヨで水っぽく、この水分が不快臭の元のようです。そこで塩茹でとレンジ加熱を施して水分をしっかり抜き、干物状にして食べてみると、イカとタコの中間のような味わいになり美味しく食べることができました。
しかし最終的には非常に小さくなってしまい、やはり食用としての価値はかなり低いと言わざるをえません。やはり水族館で愛でられている方がメンダコの価値を生かしていることになるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>


