清流の女王と呼ばれるアユを、アユで釣る伝統の「トモ釣り」。難しそうなイメージがありますが、道具選びやポイントの見極め方など基本を押さえれば初心者でも十分楽しめます。今回は必要な準備から釣り方のコツ、安全対策まで、アユ釣りデビューに役立つポイントをわかりやすく解説します。
(アイキャッチ画像提供:フジノラインテスター・鈴木誠)
トモ釣りを始めよう
清流の女王アユ。夏の風物詩でもあり、あのスイカのようないい香りと美しい追星に、多くの人が魅了されていることでしょう。アユ釣りの歴史は大変古く、日本書紀や万葉集でもアユ釣りが詠まれたとされ、一般的にトモ釣りは江戸時代あたりからとされています。縄張り意識を持つアユの習性を利用した釣り方がトモ釣りとなります。
アユ釣りは大会が開催されるほど人気がある一方、敷居が高いイメージがあり、なかなか入門できないという人もいます(筆者もその一人でした)。
私は十数年前、初めて川の流れに立ち、オトリを放った瞬間のガチンッ、ギューンと竿が絞り込まれた感覚は今でも鮮明に覚えています。
オトリアユにセットした掛けバリ(アユを掛けるためのイカリバリ)に背掛かりで掛かった野アユは、真っ黄色な追星と尻尾まで黄色味を帯びた美しい魚体でした。それからトモ釣りがやめられなくなりました。
最近ではルアーでアユを狙うアユイングが人気急上昇中ですが、伝統的なアユのトモ釣りも始めてみませんか?アユでアユを釣るという感覚、ほかの釣りにはない格別な釣趣、ぜひ体感していただきたいです。
道具編
最初にいちばん驚くのが、竿の値段かもしれません。数十万円する高価な竿が並んでいますが、初心者がいきなりそこを目指す必要はありません。まずは軽さと長さのバランスがいい入門モデル(5~8万円前後)からスタートしましょう。アユ竿は8~9mと非常に長いため、重すぎると一日中保持するのが苦痛になり、釣りが嫌いになってしまうからです。大切なのは、最初から完璧を求めすぎないこと。まずは入門セットや、レンタルもしてくれる漁協などの制度を活用し、清流に立ち込む心地よさを体感することから始めてください。
(提供:フジノラインテスター・鈴木誠)仕掛けやハリなどは釣具店で売っています。最初から仕掛けの自作はハードルが高いと思いますので、いわゆる「完全仕掛け」で十分です。使用する竿の長さに適合した長さの仕掛けを準備しましょう。フジノラインでは、完全仕掛けや鼻カン回り仕掛けを取り揃えています。正直、トモ釣りの仕掛け作りは工程があって、初心者では結構難しいかと思います。ですので、こういった完全仕掛けが釣具店で購入できるので活用しましょう。
ハリは大きく分けて、「しわり系(キープ力重視)」と「ストレート系(掛かり重視)」があります。名人級な人たちはいろいろな場面で使い分けしていると思いますが、まずは一尾を大事に釣りたいので「しわり系(キープ力重視)」をお勧めします。製品はたくさんの種類が店頭に並んでいますが、店の人に聞くといいアドバイスがもらえるでしょう。
最初は何を準備していいのか迷います。SNSや動画配信でアユ釣りに特化したサイトもたくさんあるので、まずは事前学習して釣具店に行ってみましょう。アユ釣り道具の取り扱いがある釣具店にはアユ釣りに詳しい店員がいるはずです。店員に聞いてみるといいアドバイスをもらえたり、もしかしたら目玉品が手に入るチャンスもあるかも?ぜひ活用してみてください。
釣り方
トモ釣りの格言に「アユは石を釣れ」という言葉があります。石の周りでキラキラと光るアユが見えると思います。アユは川底の石に付いたコケを主食としています。アユがコケを食べることを釣り師の間では「アユがコケをハんでいる」と言います。注意深く川底の石を見てみると細長い、引っかいたような跡が見えます。これがハミ跡です。アユが好む川底の石はひん繁にアユがコケをハみ、きれいになっています。周囲の石と比べて、コケがよくハまれているポイントを探すことが重要。
初心者が一尾を手にするための最大のコツは、「オトリアユに仕事をさせること」に尽きます。多くの初心者がやってしまいがちなミスが、竿を強く握りしめ、オトリを無理に引っ張ってしまうこと。これではオトリが疲れてしまい、野アユの縄張りに侵入する体力がなくなります。イメージとしては、犬の散歩でリードを少し緩めているような状態。
ハミ跡に注意しよう(提供:フジノラインテスター・鈴木誠)「あっちに泳ぎたいんだな」というオトリの意思を尊重し、イトを張りすぎず、緩めすぎずの状態を保ちます。野アユが縄張りを持った石の近くにオトリが泳いでいくと、目印がフワフワと不規則に動き始めたり、急に泳ぎが早くなったりします。それは野アユが警戒しているサイン。その直後、目印が水中に突き刺さるような「ガツン」という衝撃が手元に伝わります。これがアユ釣りのだいご味、強烈な「追い」の瞬間です。
最初は野アユの引きに驚かれるでしょう。でも焦っちゃダメ。いきなり引き抜こうとすると掛かった野アユが外れて(身切れ)しまったり、仕掛けを石にこすってトラブルの原因になります。まずはしっかり竿を立てて、野アユがどの方向に泳いでいくが見きわめます。焦らずに流れの緩い場所へ誘導しましょう。
そしてオトリが水面に出てきたら取り込みです。引き抜きでタモにキャッチするイメージがありますが、最初からは難しいです。竿先を上流へ向け、仕掛けが緩まないようにして、自分が掛かったアユに近づきます。仕掛けが掴める位置まできたら鼻カン回りイトをつかんで慎重にタモに収めましょう。これであなたが釣った最初のアユです。美しい魚体に感動することでしょう。
トモ釣りは循環の釣り。最初の一尾の感動に酔いしれたら、掛かった野アユをオトリとしてセットし川に送り込みましょう。トモ釣りはこれの繰り返し。どんどん元気なオトリで野アユを挑発して釣っちゃいましょう。次の出逢いに期待して「お友だち連れてきてね!」と声をかける筆者であることは内緒です(笑)
釣りのマナー・安全対策
アユ釣りは、「場所」の概念が非常に強い遊びです。先に入っている人がいる場合、その上下20m程度は、その人の「縄張り」だと考えましょう。無言で近くに入るのはマナー違反。必ず「隣、失礼してもよろしいですか」とひと声かけることがトラブルを避け、いい情報を得るためのスマートな振る舞いです。
また、安全面では「無理な渡渉(川を渡ること)」は絶対に厳禁。アユ釣り用のタビは滑りにくい構造ですが、膝上の深さで流れが速い場所は、想像以上の水圧がかかります。「一歩下がって安全な場所から狙う」。この余裕が、結果として落ち着いた竿さばきを生み、釣果にも繋がります。
解禁当初は、梅雨時期とも重なり天候が不安定な日もあります。特に雨後は、河川が増水し危険を伴う場合があります。釣行の際には天候・河川状況をオトリ店や釣具店に確認してから計画を立てましょう。夏の時期なので、急な夕立や天候の急変、河川の急な増水に注意しましょう。川の上流で雲が発達し始めたら降雨、増水のサイン。川の状況を見ながら早めに納竿するなどしてください。
引きの強さを味わう(提供:フジノラインテスター・鈴木誠)とくに雷が聞こえたら即時納竿。長い竿が避雷針の役割になってしまい、落雷など大きな事故につながります。また周囲の木々に落雷が起きると雨や川の水を伝って感電してしまう恐れもあります。ゲリラ雷雨などは本当にあっという間に天気が変わります。「まだ周りの人は釣っているから大丈夫」という油断は大敵です。安全第一で楽しみましょう。
熱中症対策も必須。川に入っていてもかなりの汗をかきます。釣行の際にはクーラーに十分な飲み物を準備しましょう。筆者は必ず2㍑程度の飲み物と、塩飴を持参します。スポーツドリンク、麦茶などミネラル補給できる飲み物は、必ず持参しましょう。適度な休憩も大事です。少しでも疲れたと感じた時には、木陰に入って休んだり、車に戻りエアコンを効かせて休憩しましょう。
いよいよアユ釣りシーズンが始まります。入念な準備と安全対策を講じて、楽しいアユのトモ釣りデビューになることを願っております。
タックル準備のチェックリスト
・竿:8~9m、オールラウンドな中硬~早瀬抜が◯
・タモ:オトリ装着・交換、掛かったアユの取り込みに必須
・引き舟:オトリや釣ったアユを活かしておくために使う
・オトリ缶:購入したオトリや釣ったアユを移動・運搬する缶
・エアーポンプ:ブクブクです。オトリ缶の中の酸素確保に必須
・鮎タイツ:水抵抗を減らし体温維持やケガ防止のために着用
・鮎タビ:川石で滑らないようフェルト底のシューズ
・鮎ベスト:仕掛けの予備やハリ、ハサミなどを収納
・偏光サングラス:川底の石の様子や鮎を目視するためにも重要
・鮎ベルト:引き舟やタモをセットするために準備する
・仕掛け:完全仕掛けが便利。交換用の予備仕掛けも準備
・替えバリ:パックで市販されている替え針を多めに準備
・ラインカッター:仕掛けや替えバリの余りイトなど切る時に必須
・遊漁券:目立つところに掲示。オトリ店や釣具店で購入
・クーラー:飲料や食料を保管。釣ったアユを持ち帰る際にも鮮度をキープできる
・氷:多めに準備を
・飲み物:熱中症予防のためにも多めに準備。スポーツドリンク、麦茶がお勧め
・食料:昼休憩はしっかり食べよう
<週刊つりニュース関東版・フジノラインテスター・鈴木誠/TSURINEWS編>



