前回の「サケ科魚類の起源を考察してみる 元々は海水魚?淡水魚?(3/8)」では、進化と食性から降海型と河川残留型について説明した。今回は産卵におけるサケの生体と婚姻色について詳しく説明していこう。
河川残留型と降海型の特性
河川残留型と降海型のいる種については、フ化、浮上後、成長の早い個体が河川残留する傾向にあり、成長の遅れた個体は1年から1年半の河川生活をへて銀毛化し降海する。
サクラマスの場合、河川残留した個体が25~30cm程度なのに対し、降海した個体は40~60cmまで成長して遡河、産卵を迎える。このとき、河川残留型と降海型の体力差は明確で、降海型のオスはメスを巡って激しく争う。
降海型は闘争性が強く、河川残留型は闘争性が弱いとされているが、河川残留型が産卵に参加できないわけではない。降海型のペアに割り込んで、降海型のオスより先に精子をかける行動を見かけることがよくある。
この傾向はすべての個体が降海する種でも確認されており、ギンザケの成長の早い個体はジャックと呼ばれ、成熟が早く海洋生活を1年ほどで切り上げ遡河する。その時のサイズは30~40cm程度である。
サケ科魚類では、幼魚時代に成長の早い個体が早熟で、産卵期には弱者となる妙な傾向がある。
色、模様の変化
サケ科魚類の1つの特徴は、その容姿を変えることだろうか。サケ科魚類の幼魚をパー、その幼斑はパーマークと呼ばれ、ヤマメやアマゴ、ゴールデントラウトでは成魚になっても幼斑が残っている。
降海する個体はスモルト個体と呼ばれ、銀白色となって海洋生活に適用する魚体に変態する。そして、進化の果てに身に付けたのが、遡河期にみられる体の変形だ。
イトウ属やイワナ属などでは産卵期の婚姻色が現れるのみだが、ギンザケやマスノスケでは婚姻色に加えて、吻が伸びてカギ状となる。
さらに、ベニザケ、カラフトマス、シロザケでは、川をのぼりやすいように体が側扁する。カラフトマスの側扁は、「せっぱり」と呼ばれ、吻はくちばし状になる。銀毛時代の容姿と比較すると、まったく別の魚のようである。これが、一生の最後に全エネルギーを遡河と産卵のために使った姿なのである。
1度の産卵後にその一生を終える種だからこそ、全エネルギーが遡河と産卵のために使えるのであろう。このせっぱりが、サケ科魚類の進化の最終形とされている。
カラフトマス(婚姻色個体)
<週刊つりニュース関東版 APC・藤崎信也/TSURINEWS編>