春になると、アジは沿岸に接岸する。産卵のために沿岸まで群れで到来するのだ。アジは産卵のために特定の水温と環境を求めて接岸するが、その理由や状況を詳しく見ていこう。アジの適水温は15℃~なので、それくらいになると春の産卵期が来たと考えることができる。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
産卵とアジの接岸
アジが春に接岸する主な理由は「産卵」である。アジは水温が15℃前後になると産卵を開始する。このあたりの水温になると、アジは沿岸に集まりやすくなる。特にアジたちが群れて卵を産み付けていくのが、藻場や堤防際などの環境だ。これらの場所は、アジが天敵に隠すようにして卵を産み、さらに幼魚が育つためにも適した場所となる。

接岸する時期は4月から5月の初めにかけてであり、この時期の水温は産卵に最適だ。今の日本であれば5月に25℃の夏日があってもおかしくないが、水温はまだ20℃まで暑くはならない。15℃~18℃安定というところだろう。だがあまり余裕を持って見ていてもいけない。アジは短期間に産卵を終えるため、滞在する群れの数も少なく、釣り人にとっては釣りに行くタイミングが重要である。
釣れる時間帯とその短さ
春のアジの産卵時期において、釣れる時間帯は非常に短い。アジが接岸する時間帯は主に夜間や早朝だが、産卵活動は限られた時間にしか行われない。特によく釣れる時間帯は一時的であり、集中して釣りを行う必要がある。朝マヅメは特に早いので、どちらかといえば夕マヅメに照準を合わせたい。夕マヅメであれば夜行性のアジの居残った群れを追釣できる可能性もある。春はバチ抜けなどパターンも豊富なので、粘ってやってみる価値もあるのだ。

接岸するアジの群れの濃さは、年ごとに違いがある。たとえば筆者のメインフィールドである大阪湾沿岸では、泉大津など比較的アジが濃いエリアでも、春はそこまで産卵のパターンのアジが多くない。どちらかといえば回遊のセグロがぽんぽん釣れたりする。産卵か、ただの回遊か、どちらのパターンかはわからないが、ともあれ夕マヅメは釣ってみるというような姿勢でいたい。
メバリングとの両刀使い
春のアジ接岸の時期には、メバリングとの両刀が推奨できる。メバルも春に浮上してくるため、アジの産卵時期に合わせて、一緒に狙うといいだろう。釣りの幅が広がるし、アジが接岸が終わったタイミングで、メバルに狙いを移して釣っていくことができる。
むろん、両方のターゲットを狙うことで、より豊かな釣果に期待ができる。ただし、アジの産卵期は短期間に限られるため、どちらかといえばアジを第一に狙って行きたい。通り過ぎてしまったらおしまいだ。メバルはまだ春終盤まで釣り方があるので、そこまで急がない。
大物ゲスト襲来にご用心
春のアジングをしていて大変なのが、シーバスやチヌといった大型ゲストの襲来である。シーバスも同様に産卵前の荒食いをするのが春で、ライトゲームのリグにも食ってくる。またアジングで釣ったアジに飛びついてくることもしばしばあり、厄介なゲストだ。

ただこのような大型魚も、アジングタックルでドラグを使い弱らせて弱らせてやっていけば、獲りきれることも多い。タモさえあれば不意のゲスト襲来にも取り込みまでできるので、大型魚の可能性があるところでは、タモを準備していこう。
産卵後のアジは低活性に
アジが産卵を終えると、体力を消耗し、深場へ落ちるようにふらふらと移動していく。このため、産卵後はアジの活性が低くなり、釣れる確率も低くなる。いわゆる「アフター」になってしまうと一気に期待が薄れるので、産卵前の荒食いの時期を狙って釣っていきたい。
さて、産卵されたアジの卵が孵るのは夏頃である。ひとしおごとに大きくなって、七月八月の豆アジの時期がくる。春の産卵期が終わるとしばらくの間は良型アジを沿岸で狙うのは難しくなる。豆アジの季節まで待つか、春時期に固め釣りするかして欲を満たしておこう。
<井上海生/TSURINEWSライター>