南日本で夜釣りをしていると顔を出す真っ赤な小魚アカマツカサ。とても「痛い」外道ですが、食べるととても美味しいです。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
南の島の「金魚」アカマツカサ
房総半島よりも西の海で夜釣りをしていると、大きなアタリとともにパチャっと揚がって来る真っ赤な魚がいます。サイズは10cm程度のものが多いのですが、金魚のごとく鮮やかな赤い体色に目を奪われます。
このような魚はいくつかの種類がいますが、関東地方周辺で最もよく見られるのはアカマツカサです。鱗が大きく模様がはっきりしている様子を松かさ(松ぼっくり)になぞらえてこの名がつけられました。
アカマツカサの赤さはキンメダイやアカムツのような深海魚を連想させますが、むしろ非常に浅いところに棲息しています。夜の海の中では深海同様に赤い体色が保護色となるので、これほど鮮やかでも敵に見つかりにくいのではないかと思われます。
小さいけれど全身凶器!
このアカマツカサ、ほとんどの釣り人にとってはかなり厄介な存在で嫌われています。サイズの割に大きな口で餌を横取りしてしまうのも理由ですが、それ以上に厄介なのはこの魚の全身を覆う棘。
背びれや尻びれなどのひれはもちろん、えらぶた、頭部上部、そして鱗の1枚1枚に至るまで、細かくて鋭利な棘が装備されています。
釣れたアカマツカサを不用意に掴んでしまうと、あっという間に手が穴だらけになります。鱗を撫でただけでも皮膚がぼろぼろになり、リリースするのも億劫になってしまいます。
大きければあの高級魚にも負けない味
そんなアカマツカサですが、条件が揃うと非常に美味しい魚だったりします。その条件とは大きいこと、そして旬の時期であることです。
筆者が先日伊豆諸島で釣り上げたものは、この種の最大クラスと言える25cm前後のもの。サイズの割に体高と厚みがあり、捌くとそれなりに身が取れます。この海域では今の時期が旬のようで、捌いてみると皮下脂肪がしっかり入り、また頭部に大きな脂の塊がありました。20cm以下のサイズではこれらは見られませんでした。
刺身や湯霜造りで食べてみたのですが、タイのような歯ごたえにキンメダイやアカムツのとろける舌触り、脂のコクを合わせた味わいで、今年食べた刺身の中でもトップクラスに美味しいものでした。釣りと調理で手はボロボロになってしまいましたが、今後も本命として狙っていきたい魚となりました。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>