「貝」を使ったよく似た名前の料理3種。しかしその内容は全く異なります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
焼き貝といえばカキ?ホタテ?
冬になると食べたくなるのが貝。アサリやアカガイ、ホッキガイなど多くの二枚貝が旬を迎え、鮮魚店にもずらりと並びます。
そんな冬に美味しい二枚貝の中でも、特に人気の高いのがカキとホタテでしょう。カキは夏に産卵するために冬から春にかけて栄養をためて大きく太ります。ホタテは春に産卵をするため、冬の間は生殖巣が大きく膨らんでおり、これが美味です。
これらの貝はどうやって食べても美味しいですが、特に人気なのはやはり「焼き貝」でしょう。膨らんでいる殻を下側にしてコンロに置き、じっくりを火を入れて焼けたらバターや醤油をかけていただきます。香ばしく焼き上がった貝は味が濃縮され、ビールのアテに最高です。焼くときは殻が鍋代わりに、食べるときは皿代わりにもなります。
貝そのものではなく殻が大事な「貝焼き」
さて、焼き貝と字面は似ているけど、ぜんぜん違う料理があります。その一つが「貝焼き」。
貝焼きも「殻を調理器具と皿にする」という点では同じですが、それで焼かれるものが全然違います。焼き貝はもちろん貝の身を焼きますが、貝焼きで焼かれるのは「ウニ」です。
ウニの可食部である生殖巣を貝殻に詰めて焼く貝焼きは、福島県から北海道にかけての北日本で作られる料理です。貝の上でじっくりと焼かれたウニはホクホクとしており、風味も軽やかになって食べやすさが増します。福島県ではハマグリやホッキガイ、北海道ではエゾアワビの殻が用いられることが多いようです。
日本最小?の鍋料理「かやき」
この貝焼きにとても似ているけど、全く違う料理もあります。それは「かやき」。この料理も貝殻を調理器具とするため「貝焼き」だったものが、やがてかやきと呼ばれるようになりました。
かやきが作られるのは青森県、秋田県などの東北地方で、用いられる殻はホタテ。大きなホタテの殻に水を入れて味噌を溶き、火にかけます。その中に青魚、干した小魚や野菜などの具を入れ、火が通ったら順次食べていきます。青森県の「かやぎ味噌」では最後に卵でとじます。
かやきは「日本最小の鍋料理」とも呼ばれているのですが、それでも近年は超大型のホタテが減ってしまったこともあり、スキレットのような小鍋で作られることもあるそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>