日本人が大好きな牡蠣。ただ、夏にかけてのこの時期は牡蠣による食中毒に気を付けなければなりません。今回は、牡蠣で食中毒になる主な理由と対策について解説していきます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
意外に多い日本の牡蠣の種類
あまり知られてはいませんが、実は日本ではおよそ25種類の牡蠣が獲れます。
中でも食用にされているのは主に、広島の養殖牡蠣で有名な「真牡蠣(マガキ)」や、天然の「岩牡蠣(イワガキ)」、それに有明海などで獲れる「すみのえ牡蠣」(有明牡蠣)や絶滅が危惧されているイタボガキなどです。
さらに、世界中で見てみると、各地で様々な種類の牡蠣が養殖されています。中国などではオイスターソース専用に養殖されている種類もあるそうです。
日本の牡蠣の産地
日本で食べられている牡蠣のうち、その大部分が上記の真牡蠣と岩牡蠣で占められています。流通しているものは養殖の真牡蠣がほとんどです。
岩牡蠣は天然物で漁獲量が限られており、流通量が少なく、期間も短いため、希少価値が高く、価格も高くなります。
牡蠣の養殖が最も盛んなのは広島県で、次いで宮城県、岡山県と続きます。この3県で日本の牡蠣養殖の90%のシェアを占めているというのだから驚きです。ただ、日本は海に囲まれていることもあり、47都道府県の中のほぼ半分の県が多少なりともカキの養殖を行っています。
牡蠣による食中毒
牡蠣といえば「美味しい」以外のイメージを持っている方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか。それが「食中毒(食あたり)」です。
牡蠣の食中毒にはいくつかあり、「ノロウイルス」、「腸炎ビブリオ」、「貝毒」、「食物アレルギー」などがあげられます。ただ、牡蠣による食中毒のはほとんどがノロウイルスだと言われています。
非常に強力なノロウイルスは、少量であっても体内に入ると腸内で増殖してしまう、とても感染力の強いウイルスです。感染すると24~48時間の潜伏期間(感染から発症までの時間)を経て、急に激しい吐き気や嘔吐が始まり、続いて下痢や発熱、腹痛などの症状が現れます。集団生活を過ごす幼児や児童の間で流行することが多く、家庭や施設など共同生活を送る環境でも広がりやすいです。
なぜノロウイルスを持つ?
ノロウイルスは人間の腸内でのみ増殖するもので、本来、二枚貝はノロウイルスを保有しておらず、その体内でウイルスが増殖することもないとされています。
ではなぜ、ノロウイルスが二枚貝から検出されることが多いのでしょうか。
それは、ノロウイルスに感染した人間の排泄物が原因だと考えられています。感染者の排泄物にはノロウイルスが含まれています。排泄物が下水処理場で浄化処理される際、ウイルスの大半はそこで死滅しますが、わずかに残ってしまったウイルスは河川から海へと流れ込みます。
二枚貝はプランクトンを餌としているので、大量の海水を体内に取り込みますが、この時の海水にノロウイルスが含まれていると、二枚貝は餌と一緒にノロウイルスを体内へ取り込んでしまうのです。こうして二枚貝の体内にノロウイルスが蓄積され、それを人が食べることで食中毒が引き起こされます。
食中毒の原因となる二枚貝では特に牡蠣が有名ですが、そのほかにシジミ、アサリ、ハマグリなどもあります。
(『貝からノロウイルスに感染? 牡蠣などの二枚貝から感染を防ぐには?』健栄製薬 2019.10.18)
夏になると危険なのは腸炎ビブリオ
一方で、夏場になると感染者が増えるのは腸炎ビブリオで「感染性胃腸炎」の原因になる細菌です。腸炎ビブリオは牡蠣に限らず、カニやエビ、魚たちなどの様々な魚介類の体表面や体内に潜んでいます。
腸炎ビブリオは海水の中であればどこでも繁殖することができ、水温が上がる夏場に爆発的に繁殖するため夏場は感染性胃腸炎患者が増えます。腸炎ビブリオの主な感染経路は、生の魚介類を調理した調理器具やまな板に触れること二次感染です。
腸炎ビブリオに感染すると強い腹痛や下痢を引き起こすと言われています。ひどい場合だと血便が出ることもあり、発熱が出るのも特徴的で、食べてすぐ(食後2~3時間後)に症状が出ることが多いです。抵抗力の低い高齢の方で死に至ったケースもある、意外と怖い細菌なのです。