人間にとって必要な睡眠。魚にとっても生きていく上で重要な生理的活動です。魚の場合は人間の睡眠とは少し違い、休息に近い状態を作ってその間に体力や各機能の回復を行っています。中でも、ハゲブダイは他の魚にはない「おっ!」と驚くスゴ技を見せてくれます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
魚の睡眠について
水槽で飼育されているメダカや金魚といった魚も海の中で生きている魚も、さまざまな方法で睡眠を取っています。
昼行性の魚、夜行性の魚、泳ぎ続けながら休息をとる魚など多種多様。眠ることは必要な行為ですが、魚たちにとって「睡眠時間」は命の危険と隣り合わせでもあります。工夫して睡眠をとらないと、他の魚や生物に捕食される危険があるからです。
例えば、砂に潜って身を隠して眠ったり、体の色を変えて海底の模様に擬態したりする魚も。毒のある背びれを立てる、海藻に噛み付いて海藻になりきって眠るなど、魚はそれぞれに工夫をした眠り方で、日々危険な睡眠時間を過ごしています。
ハゲブダイとは?
ハゲブダイは、小笠原諸島や屋久島、琉球列島、南大東島周辺のサンゴ礁や岩礁域に生息している魚で、幼魚の期間は駿河湾や高知県柏島などで生息し、成長するにしたがって南下していきます。日本以外にも台湾や香港、東沙諸島などで見ることができ、沖縄では食卓に並ぶこともある魚です。
全長は約30cmで、外見は鮮やかな青緑色。美しい見た目の魚なのにちょっと残念な名前ですが、体の中心には黄色のグラデーションの部分があり、それがハゲている様に見えることが名前の由来ではないかと言われています。
ハゲブダイの驚きの睡眠方法
そして、実はハゲブダイの睡眠方法が、他の魚にはないスゴ技なのです!
睡眠時になるとサンゴ礁の凹凸の中に身を隠し、エラからゼリー状の粘液を出して体を覆います。これは自身から出る臭いを嗅ぎつけられないようにすることで、外敵と寄生虫から身を守っていると考えられています。
見た目はまるで透明のゼリー状のカプセルのようだといいます。この透明の寝床は一晩で使い捨てなので、ハゲブダイは毎日寝る前に新しい寝床を作っています。
他の魚はどうやって寝るの?
睡眠方法は魚によってさまざまな方法があります。カワハギやアミメハギは、夜になると海草をくわえて、海流で流されないように揺れながら眠ります。
クマノミは共生しているイソギンチャクの触手の中で眠ります。触手には毒があり、触れた生きものは捕食されてしまいますが、クマノミは触れても耐性があるので、安心して眠ることができます。
今回ご紹介したハゲブダイやカワハギ、クマノミたちが、進化の中で住む環境や特徴に合わせて獲得してきた睡眠方法を知ると、改めて魚の「生き抜くためのアイデア」の素晴らしさを感じますね。
<サカナト編集部>