寿司ネタや刺身で大人気の甘エビ。一般的にエビは新鮮なものほど美味しいですが、甘エビに関してはそうとは言いかねます。
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甘エビと呼ばれるエビ
世界中で人気の高い海産物・エビ。我が国でもたくさんのエビが食用にされていますが、特に刺身や寿司などの生食分野で最も人気のあるものが甘エビです。
とろっとした歯ごたえ、食欲の湧くエビらしい香りに加え、はっきりとした甘さが感じられるのが特徴。あまりに名が体を表すため、甘エビが標準和名と思われがちですが実はそうではありません。
甘エビと呼ばれているものの大半は「ホッコクアカエビ」もしくは「ホンホッコクアカエビ」のいずれかとなっています。やや深いところに生息するエビで、深海底引き網漁やかご漁で漁獲されています。ホンホッコクアカエビはカナダなどからの輸入ものです。
最大産地で採れたてを食べてきた
ホッコクアカエビは名前の通り、北日本で多く漁獲されるエビです。中でも北海道と新潟の水揚げが多く、一番水揚げ量が多いのは北海道道北地方にある羽幌町となっています。
筆者は先日、この羽幌町でホッコクアカエビを食べる機会に恵まれました。刺身丼を注文すると、薄ピンクに輝く生のむき身が敷き詰められた贅沢な一品が登場。
口にすると、おなじみの濃厚な甘さとともに、甘エビらしからぬしっかりとした歯ごたえを感じます。輸入物のホンホッコクアカエビの柔らかさに慣れた舌にはその歯ごたえがとても新鮮に感じられました。
本当の採れたては「甘くない」
この羽幌町では、町の特産品である甘エビにより関心を持ってもらうため、甘エビに関する様々な情報を街中の各スポットにて公開しています。それらの情報の中で、最も興味深かったのが「甘エビは新鮮すぎても美味しくない」というものです。
甘エビの柔らかさは、筋肉がおのれの持つ消化酵素で分解されることで生み出されます。そしてその際に旨味のもとであるアミノ酸も大量に生み出されるのですが、この大量の旨味が舌の上で甘みのように感じられるのです。
したがって、水揚げされたてのあまりにも新鮮な甘エビだと、筋肉の分解が進んでいないために旨味が生まれておらず、甘みを感じることもないといいます。
ただし新鮮なエビの強い歯ごたえも捨てがたいものであり、産地ではあえてパッキパキに新鮮なものを食べるという人もいるそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>