タコはお好きですか?私たちの食卓になじみ深いタコ。ふにゃふにゃした足に大きな頭のように見える部分は実は胴体なのです。この記事では、タコの仲間の生態と、高級食材と呼ばれるようになっている現状についてご紹介します。
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タコは貝の仲間ってホント?
タコは軟体動物門頭足綱八腕形目に属する生物の総称。世界中で約200種類が知られており、日本近海でも50種類以上が確認されています。
岩礁にすむタコは貝殻を並べて巣を作り、砂底にすむタコは砂に潜ります。身体の色を変えたりして周囲に溶け込む姿に変わる変身上手の生き物です。
主にカニやエビ、貝などの軟体動物を食べます。
タコや同じ頭足綱のイカは貝の仲間です。「どこが仲間なの?」と思われるかもしれませんが、これらは共通の祖先を持ち、5億年前にまでさかのぼります。その後の進化の過程を経て、タコは貝殻を持たず、筋肉メインの身体を持つようになりました。
しかしタコの種類は多く、正確には貝殻を持つタコもいます。例えば「カイダコ」です。自分自身で殻をつくる、タコの中でも例外的なタコも存在します。
タコのからだのつくり
タコの身体の構成は大きく分けてみっつの部位からつくられています。胴体にあたる「外套膜(がいとうまく)」「頭部」「腕部」です。
外套膜
冒頭でも述べた通り、頭のように見えるふっくらした部分が、外套膜です。タコには心臓が3つあります。ひとつは全身に血を送るための心臓、あとのふたつはえら心臓という、機敏な動きを実現させるためにより血液を循環させるえら心臓ができたと言われています。
頭部
頭部は眼のあたりの部位です。頭から足(腕)が生えているので「頭足類」と呼ばれる所以がここにあります。
腕部
タコには腕が8本あります。実は、成熟した雄の腕の8本のうち1本は「交接腕(こうせつわん)」と呼ばれ、先端がヘラ状に変形しています。
タコは精子のカプセル「精夾(せいきょう)」を雌に渡す交接をすることで繁殖します。この繁殖形態はイカも同じです。
タコとイカの吸盤の違い
タコとイカには似ている部分が多くあります。しかし、実際には少しずつ異なっており、吸盤の作りも大きく異なります。
イカの吸盤の内側にはギザギザとした歯がついていますが、タコの吸盤にはありません。タコの吸盤はものに吸着することに長けており、餌となる二枚貝(アサリやホタテ貝など)の殻を吸盤で開けることができるほど強力です。
なぜタコの吸盤には歯がないのでしょうか?
それはタコとイカの生活スタイルの違いにあります。タコは海底で生活をします。タコのような待ち伏せ型のハンティングスタイルで吸盤に歯があると、海底で引っかかってしまう恐れがあるため、歯を持たないと考えられています。
さらにタコは吸盤で味や物の形をとらえ、腕から多くの情報を得ることができます。吸盤の役割は吸着するだけではないのです。
タコの食文化は弥生時代から?
日本人のタコの食文化は古く、弥生時代の遺跡からたこ壺と思われる土器が出土され、この頃には食べられていたのではと言われています。
大昔から食用とされていたであろうタコを、日本古来の伝統行事「お食い初め」で使用する風習がある地域があります。兵庫県や大阪府などの関西地方では、生後100日祝いのお食い初めのときに行う「歯固めの儀式」の際にタコを使用します。
タコを使う理由は諸説あり、「多」くの「幸」せを願う=多幸=タコなどと言われております。
タコは古くから私たち日本人と密接な関係にあることがよくわかりますね。
タコの価格が高騰して高級食材に
日本人に親しまれているタコですが、近年価格が高騰し、段々と庶民の食べ物ではなくなっているというのです。それはなぜなのでしょうか?
実は、海外からのタコの輸入量が円安や原油価格高騰により減少しているのです。
また、タコは海外では「デビルフィッシュ」と呼ばれ、忌み嫌う国が多かったのですが、世界的に需要が増えていることも要因のひとつと言えます。タコのおいしさが世界に知られてしまったことで買付競争が激しくなったようです(農林水産物輸出入概況令和5年より 農林水産物輸出入統計-農林水産省)。
外国産よりも高級とされていた国内産ですが、今やその価格差は縮まってきているようです。
タコと言えばタコ焼きやお寿司のネタとしても身近でカジュアルな食材のイメージがあるでしょう。しかし、年々タコの価格は高騰し「高級食材」と呼ばれつつあります。これからもタコを使用した料理の位置づけが変わることなく、身近なものとしてあってほしいですね。
<keiko/サカナトライター>