小さいけれど重要な食用魚「カタクチイワシ」が今年も旬を迎えています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
広島で「小イワシ」の漁が解禁
中国地方最大の都市・広島市に面する広島湾。ここで先月、人気の魚「小イワシ」の漁が解禁されました。
小イワシと言っても「イワシの子ども」ではありません。我が国でイワシとして流通する魚の中でもっとも小さいものである「カタクチイワシ」のことを、広島では小イワシと呼んでいます。
ここ数年では不漁気味の年もあり、今年も解禁までは心配する声がありましたが、蓋を開けてみるとここ5年で一番の豊漁。サイズも例年と比べて大きく、小売店や飲食店が次々と競り落としていったそうです。
広島のカタクチイワシが美味しいわけ
カタクチイワシ自体は全国で水揚げされる魚で、幼魚から成魚まで様々な加工をされる重要な食用魚です。しかし広島のように特別に珍重されるような地域はあまりありません。
なぜ広島のカタクチイワシが美味しいのか、それはひとえに「鮮度が良い」ためではないかと思います。我が国ではこのカタクチイワシのほかマイワシ、ウルメイワシがもっとも一般的なイワシとして流通します。マイワシとウルメイワシは刺身で食べられることが多いのですが、大きくても15cm程度しかないカタクチイワシは小さいためにあっという間に鮮度が落ちてしまいます。
広島では大都市の目の前の海で水揚げされること、きっちり冷やして鮮度保持された状態で港まで輸送されることで、生食すら可能な状態で家庭まで届きます。
カタクチイワシの刺身はイワシ類の中でももっとも美味しいと言われており、これも当地でカタクチイワシが人気の理由のひとつだと言えます。
一般家庭で食べる方法
このような話を聞けば、広島に住んでいなくても美味しいカタクチイワシ、そしてできればその刺身が食べたくなるのが魚好きの性です。
実際カタクチイワシは東京湾や大阪湾のような大都市の前海でも大量に生息しており、新鮮な状態で手に入れられれば刺身にすることは可能です。しかし刺身用のカタクチイワシを専門的に漁獲することは広島以外ではあまりなく、他の魚と混獲され、特別に扱われることもなく流通するために、鮮魚店で手に入れる時にはもう生食不可となってしまっていることが多いです。刺身で食べたければ、港湾に釣りに行くしかないでしょう。
幸い旬の時期である初夏から夏にかけては、カタクチイワシがもっとも釣りやすい時期でもあります。自分でゲットしてキンキンに冷やして持ち帰り、その日のうちに刺身にして食べるのが最終的にはもっとも手軽でしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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