アオリイカの産卵の季節がやってきました。アオリイカは「エギング」で人気のイカですが、その産卵姿の観察はダイバーにも親しまれています。今回は、アオリイカの産卵についてご紹介します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
アオリイカの生態
アオリイカは、胴長は約40~45cmで、大きいものでは50cm以上あり、重さは6kg以上になります。外見は胴は幅が広くて丸みを帯び、半円形のひれを持ちます。
日本では北海道以南の沿岸に分布しており、通常は深場に生息します。繁殖期になると、産卵のために沿岸近くの浅場にやってきます。
アオリイカは年魚と呼ばれ、寿命が1年しかありません。しかしその産卵時期は約半年ととても長いです。産卵のピークは地域差がありますが、およそ春から初夏にかけて行われます。そして産卵を終えると、ほとんどのアオリイカが死んでしまいます。
産卵の瞬間というのはアオリイカの生涯の全てなんですね。
アオリイカの産卵の様子と卵
アオリイカの産卵方法はオスが精莢(せいきょう)と呼ばれるカプセル状になった精子をメスに渡します。そして、メスが体内で受精させ、オスが見守るそばで卵を産みます。産みつける場所は主に海藻です。
念願のカップルとして結ばれてもオスは油断ができません。パートナーが見つからなかった別のオスが、隙をついてメスへ精莢を渡そうとすることがあるからです。この繁殖戦略を「スニーキング」と言います。
自分の子孫を残すはずのパートナーが横取りされることは大問題です。そのため、オスはパートナーのメスが産卵を終えるまで必死に外敵から守ります。
そうして産んだ卵の見た目は、房のような形をしており、1つに約5~6個ずつ卵が入っています。経過と共にだんだんと1つ1つがくびれてきて、さやえんどうのような形になって孵化の時を待ちます。おもしろいですね。
減っていくアオリイカの産卵床を守る
近年、海藻が減少する「磯焼け」が問題となっています。磯焼けの原因は、海藻を主食とする魚やウニなどが増えすぎてしまうこと、海流や水質の変化や河川水、砂泥の流入などさまざまな原因が考えられます。
アオリイカは主に海藻を産卵床として卵を産みますが、磯焼けのためアオリイカが産卵するための海藻も減少傾向にあり、漁獲量にも影響があるようです。そんな現状を受けて、一部地域では協力をして間伐材などを使い、人工で産卵床を作っています。ダイバーはここをポイントとして、産卵の様子を観察することができます。
また、ダイバーでない人も水族館等での展示を楽しむことができます。和歌山県の串本海中公園では「アオリイカ産卵床設置プロジェクト」の一環として、串本町・大島の産卵床に産みつけられたアオリイカの卵を展示しています(串本海中公園ーイベント&新着情報)。
今年もたくさんのアオリイカが産卵床にきてくれるといいですね。
(サカナトライター:keiko)
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