色々な国で愛されている食材「イカ」。実はイカには心臓が3つもあるのはご存じですか?イカの構造やその理由について解説していきます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
イカにはユニークなポイントがたくさん
世界中の海に生息している生物「イカ」はあらゆる海域、深度でその生息が確認されています。
そんなイカの特徴と言えば10本ある足や、とても大きな目、イカスミなどがあまり詳しくない人でも知っている特徴でしょう。
ここまではあまり魚介類に詳しくない人でもほとんどの人が知っている特徴でしょうが、イカにはさらに少しマニアックな特徴がいくつか存在します。
イカは貝の仲間
イカは生物学上でいうと「頭足網」に当てはまり、貝類と同じ軟体動物に分類されます。
いまでこそイカの外見には体を覆う貝殻は存在しませんが、体内には貝の名残があり、それが「イカの甲」とも呼ばれている「軟甲」という部分になります。
アオリイカなどの甲は透明なため、退化した名残なのは理解できるものの、コウイカ系の甲は白く大きく非常に硬いため、ほとんど骨のようにも見えます。
軟体生物らしくない骨のような硬いこの軟甲がかつてイカの体を覆っていた貝殻だったことを彷彿とさせています。
心臓が3つもあるの?
そしてもう1つあまり知られていないイカの特徴が「心臓が3つある」というもの。
イカには私たち人間と同じように血液を体内に循環させるための心臓の他にさらに2つの心臓を持っています。それが鰓心臓というエラの部分にだけ血液を送る心臓です。
イカは水中の生物の中でもトップクラスのスピードを誇る生物で、その最大遊泳速度は時速41kmにもなると言われています。
これは人間が陸上競技の100m走を9秒で走るのに等しい速度ともいわれており、そのスピードを生み出すためには大量の酸素が必要になります。
そのため効率よく酸素を循環させるために鰓に近い場所に第2、第3の補助的な心臓を持つことでこの脅威的なスピードを生み出しているのです。
人間の場合も同じように酸素を必要としますが、それはふくらはぎや太ももの筋肉が心臓のような役割を果たしてくれるため、人間には補助的な心臓は必要ありません。
3つあるからと言って不死身ではない
3つも心臓があるとなると、アニメのキャラのように不死身な生き物に思えるかもしれませんが、それは間違いです。
この第2第3の鰓心臓はあくまでも補助的な心臓のため、メインの心臓が傷ついてしまえばイカは生きていけません。
反対に鰓心臓については傷ついたり機能を果たせなくなったとしても命を落とすことはありません。ですが、最高速度で泳ぐことはできなくなると考えられています。
海には面白い生き物がたくさん
海にはイカの他にも人間にはない特徴や能力を持つ生き物が数えきれないほど存在します。
今後も面白い生き物の能力を切り取ってご紹介していきます。
<近藤 俊/サカナ研究所>