船もイカダも堤防も、春の大型アオリイカが盛期を迎えている。特に三重県南部では秋イカの終わりがなく、だらだらと釣れ続けてそのまま春イカシーズンに入った感じだ。今やすっかりアオリイカのメッカとなった南伊勢町迫間浦。4月17日に2人の名手に同行し、イカダからの春の大型アオリイカ攻略を取材した。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
エギングとヤエン釣りで春イカ狙い
さて、今回同行してくれたのは、昨年末に孫が生まれた還暦スクイッドハンターの山根充伸さん。そしてフィッシングライターの戸松慶輔さんの2人。山根さんはこれまで何度も本紙に登場している、いわずとしれたエギングの名手。
そして戸松さんには今回ヤエンで挑戦してもらう。本人によるとエギングは大の苦手だそうで、今回はしっかりと生きアジを用意して実釣に臨んでもらった。
今回お世話になったのは、迫間浦で古くから渡船業を営んでいる宝成渡船。船長の羽根洋一さんに事前に話を聞くと、前週にはエギングで2.7kgのモンスターも上がっているらしい。
ヤエン釣法について
ここで少しヤエン釣法について説明しよう。タックル、仕掛けは極めてシンプルだ。磯ザオにリアドラグ式のスピニングリールをセットし、仕掛けはミチイトの先にチヌバリ1号程度の小さなハリを結ぶだけ。この小バリに生きアジを付けて投げるのだが、基本的にアジは自由に泳がせる。
アオリイカがアジを見つけて抱きかかえるが、アジに付いているのは小さなハリ1つ。もちろんこれだけでイカにハリを掛けることができない。
そこでイカがアジを食べることに夢中になったころ合いで、ゆっくり慎重に寄せてくる。もちろんイカにハリは掛かっていないので、違和感があればイカはすぐにアジを離して逃走してしまう。いかにイカに違和感を与えず寄せてくることがキモだが、このときのハラハラドキドキがたまらないのだ。
イカがある程度寄ってくれば、ミチイトに角度がついてくる。適度な角度になったところで、ヤエンと呼ばれる全遊動の掛けバリをミチイトに取り付け、そのままイカの元に滑らせていく。ヤエンがイカの元に届いたところでアワせれば……、見事イカにフッキングというわけだ。
ただヤエンがイカに届けばいいというわけもなく、ミチイトに角度がつきすぎればヤエンの落下速度が速くイカに激突。当然イカはハリに掛かる前に逃げる。この落下速度はサオの上下で微妙に調整するが、掛かるまでのスリルがヤエン師を魅了してやまないのだ。
朝の時合いは空振り
さて午前5時20分に出船し、ものの10分ほどでイカダに到着。山根さんはそそくさとタックルをセットし、渡ってから5分もしないうちに岸に向けてエギをフルキャスト。風は全くなく、絶好のエギング日和だ。
戸松さんは2号4.5mの磯ザオに1.5号のミチイトを通し、先にチヌバリ1号を結び、アジの尻尾に近いゼイゴの部分に刺す。この方がアジが自由に泳いでくれるのだ。
そして戸松さんはもう1本。コンパクトロッドにセットしたのは、ウキ釣り仕掛けだ。これは最初からアジに掛けバリをセットしたもの。使用したのはハピソンの夜釣り用アオリイカ仕掛けだ。
これは後から掛けバリを送るヤエンと違い、アジに掛けバリが付いているので、イカがアジを抱いた瞬間にハリ掛かりする。だが負荷なく自由に泳ぐヤエン仕掛けに比べ、余分なものが付いているのでアジの弱りが早い上に、イカが警戒してアタリの数が減るというデメリットもある。
開始して2時間、エギングにもアジにも全く反応はない。朝の時合いは完全に空振りに終わってしまった。実は宝成渡船の羽根船長からは、ここ最近アオリイカの釣果がかなり落ち込んでいると聞いていた。第一陣として入ってきた群れが産卵行動に入ったか、潮が変わったか。
1匹目はウキ釣り仕掛けに
それでも名手2人がいるのだからと、気楽に構えていたが、あまりの反応のなさに少々焦りを覚え始めたころ、ウキ釣り仕掛けをセットした戸松さんのコンパクトロッドがズズッと引きずられ、海に落ちそうになった。
慌ててロッドを手に取る戸松さん。見るとミチイトがぐんぐん沖へ引っ張られている。見ていた山根さんが「ほんまにイカのアタリ?」と言うほど激しいアタリだ。アワセを入れると、特有のジェット噴射。間違いなくアオリイカの引きだ。
ゆっくり寄せてネットに収めたアオリイカは、700gほどのまずまずサイズ。「絶対離すもんか!」とアジをしっかり抱きかかえていた。