マイクロプラスチックが海に及ぼす問題について調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
マイクロプラスチック問題
「マイクロプラスチック」と呼ばれる微小なプラスチックが海や海に生きる生物、そして私たち人間に与える影響が問題視されています。
プラスチックは私たちの暮らしにとても重要な素材です。
一日の中でプラスチック製品に触らない日はないと言っても過言ではありません。
コンビニやスーパーで買える商品のほとんどはプラスチック製品で包装されていますし、自販機でペットボトルの飲み物を買えばもれなくプラスチックに触れますよね。
プラスチックは「安価」で「安全」で「加工しやすい」ことから、1900年後頃から普及し始め、私たちの生活を豊かにしてくれています。
しかし、多くの人にメリットが多い素材である一方、一度海に流出すると回収が困難になり、生態系に大きな影響を及ぼしかねないというデメリットも2010年頃から注目されています。
今回は、「マイクロプラスチック」と呼ばれる微細なプラスチックが生物や人間の体に与える影響について見ていきましょう。
マイクロプラスチックの定義
マイクロプラスチックの問題と聞くと、想像するのはビニール袋やペットボトルなどの容器が目に見えないほど細かくなり、それが海の生物に影響を与える問題だと認識している人も多いでしょう。
しかし、これは正解ではあるものの、マイクロプラスチックとなる原因は他にもあります。
まず大前提として、プラスチックは人工的に作られた化合物で、自然界に放出されても簡単には分解されず、時間の経過とともに劣化したプラスチックは細かく砕けて海面を浮遊し、一部は海中や海底に沈んでいきます。
これらのプラスチックごみのうち、直径5mm以下の破片が「マイクロプラスチック」と呼ばれています。
細かい砂粒ほどの大きさや0.001mm~0.1mmくらいの微細で肉眼では到底見えないようなものは「マイクロビーズ」と呼ばれています。
このようなマイクロプラスチックとなるまでの経緯によって、マイクロプラスチックは2種類に分類されています。
1次的マイクロプラスチック
そもそも微小なサイズで製造されたプラスチック。
近年では洗顔料や歯磨き粉などのスクラブ剤等に利用されているマイクロビーズなどがその代表例です。
排水溝などからそのまま海に流出することが懸念されています。
2次的マイクロプラスチック
こちらが私たちがよく耳にするマイクロプラスチックの原因でしょう。
発砲スチロールやペットボトルなど、大きなサイズで製造されたプラスチックが、紫外線や波にさらされて劣化、破砕、細分化されてマイクロプラスチックとなります。
このように2次的に細かくなったものを2次的マイクロプラスチックといい、代表例の1つにレジ袋があります。
風に飛ばされやすく、波風にさらされることで早期に劣化してマイクロプラスチックとなり海に流入します。
マイクロプラスチックが海の生物に与える影響
マイクロプラスチックは、PCB、ダイオキシン、DDTなどの残留性有機汚染物質(POPs)と呼ばれる海中の有害化学物質を取り込みやすいことが近年の研究で分かってきました。
マイクロプラスチックはその小ささから海洋を広範囲に移動するため、有害化学物質の運び屋となって海に汚染が広がってしまっています。
これらの有害なマイクロプラスチックを誤って摂取してしまったプランクトンは小型のサカナ→中型のサカナ→大型のサカナへと食物連鎖を通じて、有害化学物質が生き物の体内に蓄積されていきます。
さらには私たちがサカナを食べることでこの有害物質は人体にも蓄積していってしまうのです。
プラスチック自体は生活の中で排泄されていきますが、有害な化学物質は体内に蓄積される可能性があり、これが原因でガンが発生しやすくなったり、免疫力・生殖能力が低下したりするなどの作用を及ぼす可能性が危惧されています。
改善に向けた施策
すでにこれらの問題を踏まえて世界的に使い捨てプラスチックへの規制が進んでいます。
対象となっているのはプラスチック製のレジ袋、食品容器、ストロー、カトラリーなどです。
規制の方法としては私たちも身をもってよく知るように、有料化や課税、そもそもの使用禁止などです。
ゴミを減らす対策は3つのRとされています。
Reduce(リデュース):ごみを減らす、ごみを出さない
Reuse(リユース):繰り返し使う
Recycle(リサイクル):資源として再利用する
マイクロプラスチックの影響はまだまだ未知数というのが現実です。
今はまずプラスチックをできるだけ使わない、環境中に流出しないようにすることが大切です。
一人一人の小さな気遣いを積み重ねることが海の未来を守ることに繋がるのです。
<近藤 俊/サカナ研究所>