今年もホタルイカが接岸するシーズンとなりました。しかし、有名なのは日本海での「身投げ」。太平洋側ではすくうことはできないのでしょうか。調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「ホタルイカ」とは?
ホタルイカとは、「ホタルイカモドキ科」に属し、深海200m~600mに生息する、胴長7cm、重さ10gほどの小さなイカです。
ホタルイカは回遊性の一年魚で日本海を中心に日本全国に分布しています。
ホタルイカで有名な富山湾には産卵の時期である3月から5月にかけて集団で接岸し、「ホタルイカ群遊海面」と呼ばれ国の特別天然記念物にも指定されています。
これほど大量に押し寄せるのは、世界的にも見ても珍しく現象だと言います。
ホタルイカの最大の特徴というと、その名の通り体が光ること。
体には約1,000個ものごく小さな発光器があり、それが青白く発光することから「神秘の光」とも呼ばれています。
この光には「敵への威嚇」「自分の影を消す自衛のため」「仲間を見分る」など様々な場面で役立っていると言われています。
この光がホタルに似ていることから、「ホタルイカ」の名がつけられていますが、地域によっては「コイカ」や「マツイカ」とも呼ばれています。
漁獲量は富山より兵庫
ホタルイカと聞くと富山産を想像する人が大多数かと思いますが、実は漁獲量だけ見ると、富山よりも兵庫の方が上です。
近年では兵庫県の浜坂での水揚げが多く、日本一の水揚げ量を誇っています。
また、富山での水揚げは過去10年の間に減少傾向にありましたが、富山県農林水産総合技術センター水産研究所によると、2024シーズンはかなり好調で、例年よりも豊漁になると予想されているようです。
ホタルイカの身投げって?
ホタルイカの主な産地はとして有名なのは兵庫県と富山県です。
が、先にも記載した通りホタルイカ自体は日本全国に分布しています。
そんな中、富山湾では「ホタルイカの身投げ」と呼ばれる、ホタルイカが波打ち際に大量に打ち上げられる現象があります。
日本全国に分布しているホタルイカがなぜ富山湾だけ岸に打ち上げられるほど接岸するのか。
実はこれについては完璧なメカニズムは分かってはいません。
一説によると、産卵のために海面付近まで浮上したホタルイカが、富山湾のすり鉢状の特殊な地形からなる海流の影響で深海に戻れなくなり、岸に打ち上げられていると言われています。
この神秘的な現象も世界中どこを探しても見ることが出来るのは唯一富山湾でだけなのです。
もしかしたら近くの漁港でも?
日本全国に分布するホタルイカですので、もしかしたら近くに海でもすくうことが出来るかもしれないと思う方もいるかと思いますが、実際は富山の近隣県以外ではかなり厳しいでしょう。
福井の一部の海でも網や素手ですくえることがあるとは聞きますが、富山湾ほどの盛り上がりはきっとありません。
「ホタルイカの身投げ」が見れるのは春先の今だけです。
是非この機会に富山湾まで足を運び、楽しいホタルイカすくいと新鮮なホタルイカを食べてみてはいかがでしょうか。
2024年は豊漁の予想なので、きっといい思い出になることでしょう。
<近藤 俊/サカナ研究所>