釣りをしていると、思わぬ魚が釣れてしまうことがよくあります。単なるゲストであれば問題ありませんが、時として毒を持つ魚が釣れてしまうことも。今回は釣りでよく見られる有毒魚を5種ご紹介します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
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カサゴに似ている?堤防の小魚「ハオコゼ」
ハオコゼはスズキ目ハオコゼ科に属する小型種で、浅い砂底や港の岸壁に仕掛けを下ろすとよく釣れる魚です。長く伸びた背ビレの棘には強い毒を持ち、刺されてしまうと激しい痛みに襲われます。
一見、カサゴの小型個体にも似ているので、うっかり触ってしまわないように注意が必要です。両種の見分け方は簡単で、ハオコゼはカサゴと比較して背ビレが長いことや、鱗がカサゴほど目立たないことで区別することができます。
毒魚のイメージが強いハオコゼですが、実は美味しい魚としても知られており、煮付けや唐揚げで食べられています。
ただし、魚が死んでも棘には毒が残っているので、調理の際には注意しましょう。ハオコゼの毒はたんぱく毒なので、刺されてしまった場合には患部を熱くない程度のお湯につけると、たんぱく質が変性し毒が不活性化するとされています。
浅海から深場に生息する「キタマクラ」
キタマクラはフグ科キタマクラ属に属する小型種で、岩礁域でよく見られる普通種です。
変わった名前の魚ですが「北枕(日本では亡くなった人の頭を北に向けて寝かせる)」が由来であり、強い毒を持つことからこの名前が付けられました。堤防ではもちろん沖合の釣りでも見られ、100メートルを超える水深からも記録があります。
キタマクラは筋肉と卵巣を除く部位に神経毒の一種であるテトロドトキシンを持つことから、食用として認められていません。また、有毒であることに加えて、歯が鋭く仕掛けを噛みちぎってしまうことから、釣り人からは厄介な魚として扱われます。
本種は釣り人にとっては都合の悪い特徴を持つ魚なので、しばしば堤防に放置されている姿を目にします。「逃がすとまた釣れるから」という主張もあるようですが、堤防に放置した魚は時間の経過と共に悪臭を放ち、漁業関係者とのトラブルにもなります。
釣り場自体が出入り禁止になりかねないので、釣ったフグは優しく逃がしてあげましょう。この際、キタマクラの粘液には毒が含まれている可能性があるので、素手で触らないように注意が必要です。
全身棘だらけの「アイゴ」
アイゴはスズキ目アイゴ科の魚です。ウサギに似た顔つきから、英語ではラビットフィッシュとも呼ばれています。独特な匂いからバリ(尿を意味するイバリが語源)という別名を持ちます。
釣りや定置網でよく漁獲されているものの、独特な匂いがあることに加えて、背ビレ、臀ビレ、腹ビレに計24本の毒棘を持つことから、本州では外道として扱われることがほとんどです。しかし、魚の味自体はとても良いため、適切な処理を施せば刺身や唐揚げなど様々な料理で美味しく食べることができます。
沖縄では重要な食用魚として知られており、沖縄の伝統的な発酵食品である「スクガラス」はアイゴ科の1種であるアミアイゴの幼魚を原料としているほか、カーエー(ゴマアイゴ)はマース煮の食材として重宝されています。
尾部に強い毒を持った棘のある「アカエイ」
アカエイは投げ釣りでよく見られる大型魚です。一般的には外道として知られていますが、強い引きが楽しめることから敢えて本種を狙う釣り人も少数存在します。浅海から深い海に生息し底引き網でも漁獲されます。
アカエイは尾部に強い毒を持った棘を持つことが特徴です。そのため、釣れてしまっても無暗に近づいてはいけません。アカエイの棘が危険だからといって切断を試みる人もいるようですが、その行為自体が危険なので真似しないほうがよいでしょう。
そんなアカエイですが、煮付けや刺身で食べると美味であり、鮮度の良い物は肝も美味とされています。また、アカエイによる甲殻類・貝類の食害も知られており、アカエイを有効活用するための試みもあります。
ウマヅラハギなどに似ている「ソウシハギ」
ソウシハギはフグ目カワハギ科に属する大型種です。
日本各地で見られる魚で、南方では特によく見られます。食用魚であるウスバハギやウマヅラハギに形が似ていることから稀に混同されていますが、ソウシハギは独特な青白斑を持つことから明瞭に区別されます。
さらに、本種はウスバハギやウマヅラハギとは異なり、内臓にパリトキシンという神経毒を持つことが知られています。そのため、馴染みのない地域では食用とされることはありません。
しかし、内臓に毒を持つものの筋肉は無毒であるため、沖縄県などでは食用として流通しており、美味な魚として知られています。
毒に気をつけながら逃がそう
釣りをしているとこれらの魚が釣れてしまうことがよくあります。その際には有毒魚だからといって堤防に放置せず、毒に気を付けつながら逃がしてあげましょう。
(サカナト編集部・鈴川)