海の釣り場に立ってみれば、必ず一釣行に一度は巡り合う「ゴミ」。同じ釣り人としてまったく情けないばかりに、故意に捨てられた釣りの仕掛けのゴミもあれば、飲み物の缶などもある。「ゴミは必ず持ち帰ろう」と当然のマナーが叫ばれて久しいが、まだまだ減らないこの種のゴミ……一方で、海中に沈んだゴミは、再利用する動きがある。ある意味で学習しないのは釣り人だけなのだ。今回は海洋プラスチックゴミの再利用ついて話していきたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
海洋ゴミ、回収のその後
ゆくゆく、海の大きさを超えるかもしれないと言われている海洋ゴミ。それだけ増え続けており、中には全く回収不能なものもあるということだ。この現状をどうにかするために、回収した海洋ゴミを再利用しようという動きがある。リサイクルだ。
――と聞いても、しょせん市井の釣り人である我々には、なかなかイメージがわかないのだが……。一体どういうことなんだろう?たとえば、我々が釣っていて、たまにひっかけてしまう家庭ゴミや、他の人が落としたと思しき仕掛けのゴミを、どんなふうに加工してどうしているのだろう……?
再利用の例
筆者自らも気に入ってよくフリースやジャケットを着用している、Patagonia社は、アパレル業界でも率先して海洋ゴミをリサイクルし、商品を生み出しているらしい。海洋ゴミのリサイクルについて、このようなページがある。
「私たちの故郷である惑星はプラスチックという深く憂慮すべき蔓延する問題を抱えています。この4月、海の最も深い場所、マリアナ・トレンチについて学ぶ研究者のグループは、太平洋の表面下10キロ以上付近で浮かんでいるプラスチックの袋とお菓子の包装紙を発見しました。
世界中で毎年4億5千万トンのプラスチックが製造され、年次950万トンのプラスチックが海に捨てられています。ほとんどが使い捨てです。そしてこれら両方の数字は増加しています。〈エレン・マッカーサー財団〉の報告によれば、2050年には、海には魚よりもプラスチック(重量比)の方が多く存在するとのことです。
パタゴニアもつねにプラスチック問題を抱えていますが、私たちの最高の製品の多くに使用される高品質のポリエステルとナイロンのリサイクルについては、大きな前進を遂げました。1993年、パタゴニアはアウトドア衣料製造会社としてははじめて、ゴミをフリースに変身させたからです。私たちは継続して新しい素材を評価し、既存のそれを再評価しています。入手可能な最善の素材が私たちのニーズを満たすのに十分でない場合、私たちはサプライヤーと密に協力して、卓越した生地を新たに開発します。」(引用)
このページに見られる写真を見る限り、ペットボトルや漁網などが、リサイクルの対象らしい。これにより年間どれだけの海洋ゴミをリサイクルできているのかはわからないが、ともあれプラスチックだってもちろん有限資源だろうから、大きな一歩、というべきか、すでに百歩というべきか。我々の国もちょうどコロナの当初にレジ袋が有料となった。これも「嫌な時期に……」とみんな顔を歪めたものだが、どうだろう、先進国としては遅すぎたくらいなのかもしれない。
実は魚よりもプラスチックゴミの方が多い?
プラスチックは海水で分解されるが、非常に長い時間がかかるらしい。分解と回収が追い付かない量は、海でゴミの山をなしていく。そしてこのままのペースでは、2050年には、海の魚の総重量よりも、海洋プラスチックゴミの方が多くなってしまうのだとか。
そんなディストピアが嬉しい人はいない。釣り人として、私も何かしたい。下の画像みたいな缶ビールのゴミは、拾って帰るくらいの心の広さを持ちたいものだ……。それにしてもこんなもの、捨てるなよ、本当に。
テクノロジーの進歩と釣り人マナー
Patagonia社が最初にプラスチックゴミをフリースへとリサイクルすることに成功したのは1993年とのこと。それから30年以上、同じような試みを続けてきたらしい。その一方で、いたちごっこみたいに、とも言わないが釣り人のマナーは悪くなるばかり。釣り場のゴミは減らない。技術の進歩は目覚ましいものだが、ゴミは捨てないでおこう、という個人の単純な心がけにより、海を汚染から守りたい。
<井上海生/TSURINEWSライター>