魚の中には、様々な理由で「絶食」を行う、もしくは行うことができるものがあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
世界最大のナマズが絶食するわけ
世界中の淡水域(一部海水)に生息し、生態系の上位を担っているナマズ類。主に淡水に生息するグループでありながら海水魚を凌ぐほどに成長するものもありますが、中でも巨大になるのがメコンオオナマズです。
メコンオオナマズは最大で3mほどになるという世界最大のナマズで、名前の通り東南アジアを代表する大河「メコン川」とその水系にのみ生息しています。実は先日、日本の水族館の研究により、彼らが驚きの性質を持っているということがわかりました。その性質とは「ご飯を食べない」こと。
体重350kgにも達するという巨大な彼らですが、なんと1年間に及ぶ絶食が可能な体の仕組みを持っているのだといいます。こんな能力をもつ理由は、彼らが川の中に生えている藻類を食用にしているから。
メコン川流域には雨季と乾季があり、乾季になると水位が大きく下がります。そうなると藻類が生えず、餌にありつきにくくなってしまいます。そんな時期を生き延びるため、絶食することが可能な生理的機構を手に入れたのだそうです。
絶食が可能な魚たち
このメコンオオナマズのように、一定期間の絶食が可能な魚たちというのは少なからず存在します。
例えば、世界最大の魚として有名なジンベエザメ。プランクトン食をすることで有名なサメですが、最近の研究で藻類など植物性のものも食しており、更に4ヶ月ほどの絶食に耐えることが判明しました。
身近な例でいうとウナギも長期間の絶食が可能で、飼育環境下で1年以上に渡る絶食が観察された例もあるそうです。彼らは産卵のために川を下る際には餌を殆ど食べなくなりますが、全身にたっぷりと脂を蓄えています。食べた餌を効率的にエネルギーに変換し溜め込む能力を持っているのかもしれません。
養殖魚を絶食させるわけ
絶食をするのは天然魚だけでなく、実は養殖魚も絶食することがあります。と言っても「餌を食べなくなる」というより「餌を食べさせなくする」人為的な絶食です。
なぜ絶食させるのか、それは養殖の大敵「赤潮」が関係しています。プランクトンの大量発生により赤潮が引き起こされると、彼らが酸素を消費することにより海中が貧酸素状態になります。それにより魚たちが窒息してしまい、大量斃死に繋がります。
しかし、赤潮が発生しそうなときにあらかじめ魚たちを絶食させておくと、動きが不活発になりじっとすることが増えるため、酸素消費量が減ります。そうして、貧酸素環境下でも生き延びられる可能性が高まるのだそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>