昨今、カヤックやSUPに乗って釣りをするスタイルが人気急上昇中。おかっぱりでの混雑とは無縁で、釣果も期待できるという理由が大きいでしょう。しかし、始めてはみたいものの、自分にはどちらが向いているのか悩む方も多いようです。そこで今回は、カヤック・SUPのなかでも釣りによく使用される、シットオンタイプのカヤックとインフレータブルのSUPを比較。様々な要素のなかでも、とくに質問されることが多い「機動力」にフォーカスして解説します。
(アイキャッチ画像提供:HOBIE JAPAN)
海上での機動力
海上での機動力に関しては、カヤックの優位性が際立ちます。
カヤックとSUPどちらが速い?
カヤックとSUPを乗りくらべたとき、もっともちがいを感じるのがスピードの差です。
SUPもトレーニングした人がボードの上に立ちあがり、全身の筋肉をうまく使って全力で漕げば、カヤックに負けないくらいのスピードを出すことは可能です。しかし、実際に釣りをするときは膝立ちか座ったままで漕ぐことがほとんど。カヤックが早歩きか小走りとすれば、SUPは普通に歩くスピードくらいのイメージです。
SUPフィッシングでもっとスピードを求めたいのであれば、シングルパドルでは推進力に限界があるため、カヤックで使用するダブルブレードに変更するのも有効な手段です。
カヤックとSUP どちらが流されやすい?
風に流されてはもとのポイントに戻り、また流されて……を繰り返していると、体力的にもメンタル的にも疲れてしまい、結果的に機動力の低下につながります。
カヤックやSUPは、広大な海の上では小さな木の葉のような存在。強い風が吹けば、あっという間に何十メートルも流されてしまいます。それをふまえて、あえて比較すればカヤックの方が風が吹いても流されにくいといえます。
SUPは、船体が軽く板状であるため、風の影響を非常に受けやすく、クルクルと向きが変わったり流されたりしやすい傾向。まさに木の葉のイメージです。
それに対して、カヤックはSUPよりも重く、水中に浸かっている部分が多いため、多少は風に対して耐性があります。
どちらにしても、強風下では非常に釣りがしづらく、なにより危険なので避けるようにしましょう。
カヤックとSUP どちらが走波性がある?
風が強かったり、波が高かったりという悪条件下では、波を乗り越えていく能力、すなわち「走波性」が機動力に大きく影響します。
カヤックとSUPの形状をくらべると、あきらかにカヤックの方が船首がとがっていて、波を切り裂いて進みそうな形をしています。
それに対して、SUPの底面はフラットで、波を切り裂くのではなく、波を1つずつ乗り越えて進むイメージ。SUPは、海上での機動力においてカヤックに劣り、荒天時には苦労すると認識しておきましょう。やはり、海が荒れている状況では、走波性に優れているカヤックの方が安心感がありますね。
ちなみに、同じカヤックのなかでも手漕ぎと足漕ぎをくらべると、構造的に足漕ぎカヤックの方が一定して水をつかむことができるので、荒れた海での走波性が高いと考える人が多いようです。たしかに間違いではありませんが、乗り手がパドリングに熟練した人であれば、手漕ぎタイプの方が応用がきく場面もある一方、足漕ぎは後進ができて小回りがきくタイプもあるなど、どちらが優れているか一概には言えません。
くれぐれも足漕ぎカヤックだから安心だとか、自分はパドリングが上手いから大丈夫などと過信して、無理な釣行をすることがないように気をつけてください。
心理的な機動力(安心感)
前項で、「安心感」という言葉を使いましたが、心理的要素によってもどこまで沖に出られるかが変わってきます。
例えば、いつエンジンが止まるかわからないクルマでは、長距離のドライブに行く気にはなれませんよね。それと同様に、カヤック・SUPにも沖に漕ぎ出すためには安心感が必要です。
SUPフィッシングはトラブルを想定したエリア内で
インフレータブルのSUPにどうしてもつきまとう不安が、パンクやバースト。パンクは、とがった岩にぶつかったり、フックや魚のヒレなどが刺さったりしてSUPに穴があくことで発生します。バーストとは、夏場の温度上昇などによって、SUP内の空気が膨張することで気室が破裂してしまうことです。
SUPフィッシングに慣れていて、空気圧も毎回バッチリ調整しているとしても、魚をバラした瞬間にルアーが飛んできたり、不意にかかったダツやサメが暴れまわったり……それらの可能性をゼロにすることは不可能に近いでしょう。
複数の気室をそなえているSUPであれば、1つ穴が空いたとしても、すぐに沈んでしまうようなことはありませんが、当然ながら機動力は低下します。その状態で沖から漕いで帰ってくる事態を想像すると……あまり遠くまで行かない方が無難だと言えますよね。
SUPで沖まで出たいのであれば、単独釣行は避けて複数で行くか、近くに他のカヤックやSUP、船舶などの助けが呼べるエリアから離れないことが必要です。
カヤックでも油断は禁物
海上での機動力や、パンク・バーストの不安がないことを考慮すると、カヤックの方が多少はSUPより沖に出られるといえます。しかし、人力であることに変わりはないので、自分の体力を過信しないようにしましょう。
また、カヤックが帰着困難になる代表的トラブルは、パドルの流出やドレンプラグ(水抜き穴の栓)の閉め忘れによる浸水、強風によって前進できなくなるケースなどです。
「予備パドルを装備する」、「出艇前には必ずドレンプラグを確認する」、「出艇後もこまめに気象情報をチェックする」などを怠らなければ、回避できることがほとんどです。沖に出るときは、とくに油断しないでしっかりと対策してください。
おすすめのカヤックを紹介
このように、カヤックとSUPどちらにもメリット・デメリットがあります。簡単にまとめると、陸上での移動のしやすさではSUP、海上での航行性能ではカヤックが優れています。
できることなら、どちらも所有して状況に応じて使い分けられればベストですが、実際はそれが難しいことも多いですよね。そこで、カヤックとSUPのメリットを兼備したおすすめのモデルを1艇ご紹介します。