今年の母の日、遠方から遊びに来た高齢の母親に釣魚料理を振るまったエピソードを紹介したい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・宮崎逝之介)
かすかな記憶をたどる
すっかり途方に暮れていたのだが、今回長女の出産がきっかけとなって、かすかな記憶がうっすらと蘇った。
その場面は数十年前。今回母親になった長女自身が生まれて間もない乳児の頃、筆者の母親がやはり遠路遥々育児や家事の手伝いのため、当時暮らしていた都内の集合住宅に来てくれた数日の間に起きたできごとだ。
母親が、近所の魚屋の店先で焼かれていた食べきれないほど大きなマグロの頭を買って来て私たち家族を驚かせた。当時まだ釣りの心得もなく、あまりの大きさに驚いていた筆者に向かって「おいしそうだったから買って来た」と母は笑って言った。
焼き魚なら食べるかも
そうか、生魚は嫌いでも焼いた魚は好きなのかもしれない。数日前に釣ったワラサと真鯛を焼こうかな、と思いついた。
さっそく母親に電話で聞いてみた。「ブリの頭焼いて食べるか?」「ああ、それはおいしそうだね」「真鯛の味噌焼きも食べるかい?」「食べる、食べる」事態は一気に好転した。
母の日前夜に釣魚料理をふるまう
そして母親が我が家を訪れたのは母の日の前夜。筆者が数日前に釣ったワラサと真鯛をそれぞれ兜焼きと西京焼きにして供すると母親は「おいしい魚だ」「ああ、いい味だ」「よくこんなの釣ったね~」と何度も言いながら食べてくれた。
嫌いなものには箸さえつけない母なので、お世辞じゃなく本当に喜んでくれたのだと信じたい。これまでに数回、母が我が家を訪れたことはあったが、いつもタイミングが合わず、釣った魚を食べてもらったのは今回が初めてだった。
明くる母の日の朝早く、母親と弟は弾丸ツアーのように帰途に就いた。母親は帰り際にも夕べの魚がおいしかったと言ってくれた。釣りのおかげでほんの少しだけ親孝行ができた気がした。
<宮崎逝之介/TSURINEWSライター>