初夏が旬の高級魚イサキ。似た名前の魚がいくつかありますが、そのいずれもが分類学上は遠縁であり、それでいていずれも初夏が旬となっています。
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初夏が旬の高級魚イサキ
GWも終わり、梅雨に向けて蒸し暑くなっていくこの頃。梅雨の足音が感じられるこの時期に、旬を迎える魚の代表といえばやはり「イサキ」です。
5月後半から6月にかけてのイサキは、夏に来る産卵期を前にして非常に脂が乗っており、美味しいことが知られています。この時期のイサキを表す「梅雨イサキ」「麦わらイサキ」といった言葉があるほどです。
普段はむしろ細長いシルエットの魚ですが、初夏のイサキはパンパンに膨れ上がって体高が高くなり、まるで別の魚のようになります。
ちょっと似てるけど異なるアカイサキ
さて、そんなイサキにちょっとだけ似ている魚で「アカイサキ」というものがいます。
そのシルエットはイサキのように丸みのある紡錘形ですが、焦げ茶色をベースにしたシックな色合いのイサキと異なり、アカイサキはピンクと黄色を基調にした鮮やかな色合いが目立ちます。
彼らはイサキと同じように岩礁帯周りに棲息しますが、イサキと比べるとアカイサキのほうがより深いところにおり、時には水深200mより深い「深海」レンジで釣れることもあります。
そんなアカイサキ、実はイサキ科ではなくハタ科の一種です。ハタ科らしいさっぱりとした白身はこれからの時期に旬を迎え、ムニエルなどの油を使った料理で美味しくなります。皮目の色合いの良さもあり、本家イサキほどではないとは言えどそれなりの値がつくようです。
釣り人しか知らない?シマイサキ
イサキやアカイサキの他にも、初夏に旬を迎える「イサキ」がいます。それは「シマイサキ」。イサキとはシルエットこそやや似ているものの、イサキ科に含まれるイサキに対し、シマイサキはシマイサキ科という全く異なるグループに分類されます。
こちらはイサキと異なり、岩礁帯よりも河口や内湾を好む魚です。身近な港湾部にも棲息しているため、釣りでしばしば顔を見る存在と言えます。
シマイサキはイサキやアカイサキと異なり、美味しい魚という評価をされることはあまりないようです。それもあり、流通に乗ることもあまりありませんが、イサキ同様に塩焼きにすると、皮目に独特の風味があり美味しく食べられます。ちなみのこの魚も旬は初夏になります。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>