長年釣りをしていればいろいろなことを経験する。今回は30年ほど昔に誰もいない新月の地磯で経験した恐怖体験を共有したい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター谷口墨人)
30年前の釣り場事情
30年ほど昔、私は週末になるとエギングでアオリイカ、投げ釣りでマダイを狙って、重い釣り道具を担いで中紀の地磯に通っていた。そのころは、エギングブームにはまだなっておらず、釣り場は空いていた。地元の釣り人がイカ釣りをのんびりと波止で楽しむくらいで、夕飯のおかずに1杯釣れれば帰っていくのが普通だった。
日中は投げ釣り夜はエギング
当然、地磯は空いているので、その日も私は誰も近くにいない地磯で釣りをしていた。現地には夕方までに到着し、暗くなるまで投げ釣りでマダイ狙い。ランカー級は釣れなかったが、40cmクラス迄は釣れていた。大きなキスも釣れるかもと思っていたが、水深がそこそこあるせいなのか、キスは釣れなかった。
そして、暗くなると、ウミヘビや黒アナゴがゲストで釣れるので、長物が苦手な私は早々と納竿し、エギングに変更した。
当時はイカの個体数が多く、特に月夜の夜は周りが少し明るいためか、イカが活発に大分型エギにアタックしてきた。アタリが多い時は、釣りに集中しているので、余計な事は考えていられなかった。しかし、新月の夜は、イカのアタリが少なかった。こんな時は暇で、集中力が無くなってくる。
集中力切れて
この日も上空を見上げれば、星空が輝き、たまに流れ星がみえた。沖合には、紀伊水道を、タンカーや旅客船が航行している。地上に目を移すと、誰も近くにいない地磯だ。周りは真っ暗。 釣りに集中している時は、周りの音も気にならなかったが、投入だけを繰り返し、集中力が切れた今は、音に敏感になり、波音や、風で木々がざわめく音が聞こえてくる。
こうなると余計なことが頭をよぎる。当時、毎年夏になると、釣り雑誌に釣り場で起きた恐怖体験談が掲載されていたのだ。だんだん周りが気になってきた。
暗闇に光る二つの目
その時、後方の林の中で、ガサガサと音が聞こえた。私以外誰もいないはずの磯である。恐る恐る高輝度のライトで照らしてみると、2つの目が光っていた。恐怖体験を思い出していただけに、心臓が飛び出るほどびっくりした。
もちろん、しばらくすると光る目は林の中に消えていった。どうやらタヌキだったようだが、新月の夜は釣れないうえに恐ろしいので、長居は無用と逃げるように磯を後にした。
今は、若くはない年齢になったので、安全な堤防や護岸で釣りをしている。夜間でも周りには釣り人がいるので、安心して釣りを楽しんでいる。
釣行時に無理は禁物。安心、安全に釣りを楽しんでほしい。
<谷口墨人/TSURINEWSライター>