日本の食卓に欠かせないウナギ。その救世主となるかもしれないとある「代用品」を、ウナギとは一見縁のなさそうなイスラエルの企業が開発するというニュースが注目されています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
なぜイスラエルの企業が?
さて、今回注目を集めているのは、そんな培養ウナギの開発を進めているのが「イスラエルの企業」であるということ。
イスラエルで多数派となっているユダヤ教では「鱗のない魚を食べてはいけない」という戒律があり、ウナギを食べることはできません(厳密には非常に細かい鱗はありますが……)。なのになぜ、そんなイスラエルの企業が培養ウナギを開発するのでしょうか。
実は今、イスラエルは世界で最もスタートアップ企業が多い国のひとつ。国を挙げてサポートする体制があり、若い人たちも柔軟に起業をしています。
さらに世界的な潮流として、今後訪れるとされる食糧生産危機やSDGsの盛り上がりを見据え、培養肉など食料アグリテック分野での起業が盛んとなっています。そのためイスラエルにおいても、この分野でのスタートアップ企業が増えているのです。
培養ウナギの生産を発表したForsea社もその一つ。高度な培養技術をバックグラウンドに様々なシーフードの培養を模索した結果「ウナギの培養が最も採算性が高い」と判断し、参入につながったのだそうです。
採算性が高い理由は「日本」に安定的かつ強固な市場があるから。御存知の通り、ニホンウナギは絶滅危惧種であり、価格も高騰してすでに庶民の口に入りにくくなりつつあります。培養ウナギであれば資源量に関係なく一定数を流通させることができ、本物のウナギより安い価格を設定しても利益を上げることができると見られているのです。
今後、イスラエルの企業が作る「代用だけど本物」のウナギが、我々の口に入るようになるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>