食用イカの多くは、各地にその地域ならではの地方名があります。日本で最も知名度のあるイカ「スルメイカ」もたくさん地方名があり、そのいくつかにはとある共通性があります。
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山形のスルメイカが豊漁
山形県の沿岸「庄内地方」の中心都市のひとつ酒田市。日本海での漁業が盛んなこの街で、今年も「スルメイカ漁」が全盛期に入っています。
今年はスルメイカのシーズンが例年よりもやや早く訪れたそうで、漁港は連日の豊漁で活気にあふれています。水揚げも不漁だった去年よりはかなり良く、例年並みの水準とのことです。
先月17日には、およそ4000kgもの水揚げがあったといいます。
近年は不漁続き
スルメイカといえばかつては最もポピュラーなイカで、その消費量は他のイカと比べてもダントツでした。加工品や惣菜に欠かせないイカで取引量も多く、経済学上は日本の魚介類で最も重要な種であるということもできたのです。
しかし近年、日本近海において、スルメイカの異常な不漁が続いています。全国の漁獲量は2013年には17万tを記録しましたが、2018年には5万tを下回っており、5年で実に1/3以下になっているのです。
そのためかつては1パイ200~300円で買えるのが普通でしたが、今では不漁に伴い価格が高騰し、スーパーでも1パイ1000円近くなってしまっていることもしばしば。同じツツイカ類のヤリイカやアオリイカなどと比べると「庶民のイカ」というイメージが強かったのですが、今ではその影もありません。
不漁の原因は乱獲の他、海洋温暖化や魚種交代などが言われていますが、はっきりしておらず、調査が続けられています。
植物由来の地方名がたくさん
そんなスルメイカですが、高騰しても重要な魚種であることに変わりはなく、今日も全国で盛んに食べられています。
全国的に漁獲され古くから食べられているので、スルメイカには他のイカと比べ「地方名が多い」という特徴があるようです。これに関してすこしユニークなのは「植物の名前にちなんだものが多い」ということでしょう。
スルメイカは各地で「松いか」と呼ばれるほか、関東では小型のものを「麦いか」もしくは「ばらいか」と呼び習わします。このうち「麦いか」は胴長15cmほどのサイズのものを指し、麦の収穫期である初夏に水揚げされるためこの名がついたのですが、松いかやばらいかについては名付けの理由があまりはっきりしていないようです。
ちなみに松いかはホタルイカの別名でもありますが、これは時期になると大量に獲れるホタルイカが、海岸林として重要だった松の肥料に使われたからとのことです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>