専門の学者によって命名され、学術的にも重要な「標準和名」。しかしときに、耳にするとつい脱力してしまうような間の抜けた和名の魚も存在します。
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なぜこんな名前に?
ウッカリカサゴはカサゴによく似ており、かつて長らく同一種であると思われてきました。分類学者もうっかりしていたということで、このような和名になったのです。
オジサンは、海底に潜る餌を見つけ出すためのヒゲが生えた「ヒメジ」という魚のグループの一種です。オジサンそのものにも立派な髭が生えており、そのために小笠原で「オジイサン」と呼ばれていたものが転訛し、このような和名になったと考えられています。
キタマクラはフグの一種で強い毒を持っており、不用意に食べると死んでしまうためにこのように名付けられました。我が国では古くから、遺体を安置する際には頭を北に向け「北枕に寝かす」ことに由来しています。
ほかにも、古くから知られる魚には「詩的」あるいは「風流」な名前をつけられたものが少なくありません。これらの例からも分かる通り、和名は比較的「適当な理由」で名付けても許される側面があるといえます。
実は分類学上重要なのは、世界共通で使用されるラテン語の学名。標準和名は国内で便宜的に用いられているもので、そこまで重要ではないということもできます。そのため、ある程度まではユニークな命名をすることが許されているといえるのです。
なお、あくまで噂ですが、面白い和名をつけたいがために分類学者になるという人もいるそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>