AIによって自動で生産された養殖魚なんて近未来の話のようですが、すでに各地で様々な魚がAI技術を駆使して生産されています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
人工知能AIが養殖したマダイ
大手回転寿司チェーン「くら寿司」が、期間限定で提供する予定の、とある寿司ネタがいま話題になっています。
ネタの名前は「AI桜鯛」。その名の通りなんと「AI(人工知能)が養殖したマダイ」なのだといいます。
AI桜鯛は3月11日から3月15日まで全国店舗で提供(なくなり次第終了)となり、価格は一貫110円となるそうです。なお、AIの技術で養殖された魚を大手外食チェーン店が提供するのは我が国では初めての試みだそうです。(『「AI桜鯛」くら寿司発売』水彩経済新聞 2022.3.8)
IoTが漁業の課題を解決
くら寿司は2010年に水産専門の子会社を設立し、AIやIoT(インターネットとモノの連動)技術を駆使した「スマート養殖」の実現に向けた実証実験を行ってきました。今回のAI養殖タイも、その一環で生産されたものといえます。
「AI桜鯛」の養殖では、東京都のスタートアップ企業が開発したAI制御式の給餌器を使うことで人力による作業を減らし、また無駄な飼料を使用せず効率よく魚を育てる事が可能となっているそうです。
同社は、漁業界で長年かつ喫緊の課題となっている「人手不足と悪い労働環境、収益性の低さの改善」を目指し様々な取り組みを行ってきました。スマート養殖の発展と活用は、そのような問題の解決に寄与するものとして大きく期待されていることなのです。
様々な魚種に応用
実は、AI制御によって養殖される魚はいま増加傾向にあります。例えば福井県では、2019年からAIを活用したサバの養殖が実施されています。
この事業では、養殖いけすに設置したセンサーで水温や酸素濃度といった環境指標を随時に取得しAIを使って分析。データをまとめ、養殖におけるノウハウのマニュアル化を行っています。加えて魚の行動からタイミングを定め、自動的に給餌するシステムや、水中カメラによる魚体サイズの推定機能によって給餌効率を上げています。
他にも変わったところでは、キャビアの原料と知られるチョウザメの養殖が北海道で、淡水魚で最も美味しいとも言われるコイ目の魚「ホンモロコ」の養殖が福岡で、それぞれAI技術を活用して実施されています。今後も様々な魚種に「AI養殖」技術が活用されていくことは間違いないでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>