社長から突然の「移住」命令。熊本県上天草市で1泊2日の「お試し移住」体験をしてきた。上天草市長への直撃インタビューなど、2日目の様子をお届け。
初日の様子:釣り編集者が上天草へお試し移住 移住家族に聞く「リアルな本音」とは?
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS編集部・立石)
「偉い人」にインタビュー
続いて、移住事業の責任者にインタビューをすることになっており、上天草市大矢野庁舎に赴いた。応接室に招かれ、「なんだかやたらと丁寧な対応だな」と考えていると、しっかりした顔つきの男性が入室してきた。どこかで見たことのある顔である。
「……えつ、市長?」
そう、堀江隆臣(ほりえ・たかおみ)上天草市長である。聞いてないよ、明瀬さん。緊張しちゃうよ。
内心ドキドキしつつも、さっそくストレートな質問をぶつけてみた。上天草市は「釣り」で移住者を増やそうと本気で考えているのか。
「海に囲まれていることで、昔から熊本は”釣りどころ”として、釣りに行くなら天草とか、そういうイメージはあったと思います。以前から釣り愛好家がセカンドハウスを求めることはありましたが、釣りを移住や定住につなげる動きはなかった。釣りにたくさん来ていただいている方々を地域の経済活動に取り込んでいくことを考えています」
市長は本気だ。上天草市では「釣り」を主軸に、本気で移住・定住者の増加を推進している。堀江市長が続ける。
「豊かな自然に囲まれて、都心部にはない環境を気にいっていただける方にはすぐに来ていただきたい。コロナの影響もあって、密を避けるテレワークやワーケーションも推進されている。環境を整えながら上天草を楽しんでいただき、将来的に移住まで考えてもらえればいいなと考えています」
上天草への移住の最大のメリットはやはり「海が近いこと」だという。「居間から窓を開けると海が見える環境です。たまに遠いところから来客があるとびっくりされる。元々離島なので、それぞれの漁村に集落があって、それが今につながっている」とのこと。
市長が語る「リアル」
失礼を覚悟して「都心部から上天草市に移住して、生活に慣れていけますか」と質問すると「田舎の町なので都心部ほどの利便性を求められても、そこはちょっと厳しいと思いますね。それ以上にこのロケーションを気に入っていただいた方、生活したい方、ここで子育てをしたい方、そういう方たちに来ていただけるとありがたい」とリアルな回答。
上天草の環境をポジティブに捉えることができる人に多く集まってもらい、地域を活性化したいという思いが感じ取れた。
「熊本都市圏まで車で1時間なので、大きなハンディにはならないと思います。今年の12月にはどこの地域にも光回線が開通します。職種や業態は限られるかもしれませんが、ここでセカンドハウスでもサテライトオフィスでも、ワーケーションで上天草に来られるなら行政としては精一杯お手伝いしたいと考えています」
良いところばかりを見せるのではなくて、とても現実的な提案に聞こえた。完璧ではないけれど、デメリットを超えるメリットが得られるし、デメリットをカバーする具体的なフォローもある。さすが市長、抜かりない。
移住検討者へメッセージ
最後に釣りが好きで移住を検討している人へのメッセージをお願いした。
「一年を通じて比較的に海が温暖で、海況が安定していることが上天草のいいところかなと思います。釣り船も多く、陸釣りのポイントがたくさんあるし、季節によって魚のターゲットも豊かなので、ぜひ一度、上天草に釣りに来ていただきたい。釣り人が飽きないように色々なイベントを準備していますので、行政のほうにお尋ねいただければ精一杯サポートさせていただきます」
市政に釣りを取り入れる柔軟な発想は、釣り人の1人として大変うれしい。ちなみに市長も北九州市門司の遊漁船で船釣りを経験したことがあるという。そして、スキューバダイビングが趣味だそうだ。海好きだからこその発想なのかもしれない。
市長の丁寧な対応、そして真摯に答える姿を見て、時間が経つとともに緊張もほぐれてインタビューができた。ありがとう明瀬さん。「聞いてないよ」とか言ってごめんなさい。