浜名湖の名産品として知られる巨大カニ「どうまんがに」。近年水揚げが減少していましたが、ここ2年は逆に急増しているといいます。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
浜名湖の「どうまんがに」
浜名湖の名産のひとつに「どうまんがに」というカニがあります。高級ガニとして有名で、地元料理店などで消費されてきたのですが、近年は他の多くの水産物と同様、乱獲などによる水揚げの減少が懸念されていました。
しかし実はここ数年、どうまんがにの漁獲量が急回復しているといいます。浜名湖のどうまんがにの水揚げは2018年に3,121kgを記録していましたが、翌2019年にはおよそ2.3倍の7,313kgに急増しています。さらに2020年はさらに7,503kgにまで増えたそうです。
どうまんがに漁の盛期はこれからですが、2021年も7月末時点で785kgの水揚げがあがっており、これは過去2年とほぼ同じ水準なのだそうです。(『浜名湖「ドウマン」、水揚げ復調 希少な大型ガニ 温暖化影響か』静岡新聞 2021.9.15)
どうまんがにとは
どうまんがには、標準和名を「トゲノコギリガザミ」といいます。渡り蟹として知られるガザミと近い仲間ですが、大きくなるのが特徴で、ときに2kgを超えるほどのサイズになります。
ノコギリガザミといえば、最初に目につくのがその巨大なハサミ。1.5kgほどの個体で成人女性の手と同じくらい大きさがあり、その力も強大で、挟まれると大怪我を負うこともあります。
内湾の砂泥底に生息し、英語では「マッドクラブ」と呼ばれます。南方系のカニで、水温の高い南日本での漁獲が多くなっています。1kg単価で8,000円ほどになる超高級カニで味も大変良く、身がたくさん詰まっており、とくにミソの旨味は出色です。
関東にもいる?
太平洋に面し、黒潮の影響で温暖で浅い入り江が広がる浜名湖は、ノコギリガザミ類の生息に適しています。しかしそれ以北の東日本にはあまり生息しておらず、商業的に漁獲されるのは浜名湖が北限となってきました。
しかしその生息北限が、近年急激に北上しています。これは海洋温暖化の影響と考えられており、例えばかつてはあまり姿を見かけなかった相模湾でも、いまでは比較的普通の種類となってきています。
また内湾で浅瀬の多いという特徴は、まさに「東京湾」にばっちり当てはまるもの。現在の水温上昇トレンドが続いていけば、ノコギリガザミの東京湾への定着も時間の問題かもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>