少しずつ寒さが増してくる秋、多くの食材が旬を迎えますが、中でも秋を代表する味覚と言えば「サンマ」は欠かすことのできない存在でしょう。サンマは身だけではなく、内臓もほろ苦く大人な味で美味しいですが、なぜ苦いのに美味しく感じるのでしょうか。調べてみました。
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味はほろ苦く大人な味
サンマの内臓がなぜ苦いのかというと、それはある臓器が苦みを持っているからです。サンマの内臓は基本的に苦味がありません。脂がたっぷりとのった内臓はむしろ脂で甘みを感じるほどです。
しかし、唯一、胆のうの胆汁だけが苦味を持っています。
サンマに関しては適度なほろ苦さがアクセントとなり、大人な味を演出していますが、他のサカナに関しては、「潰したら身に苦みが移る」からと、絶対に潰してはいけない臓器と言われるほど苦い味をしています。
胆のうも美味しく食べられるサカナはサンマだけなのです。
大人が美味しいと感じる理由
しかし、ここで疑問が生まれます。
子供の時には飲めなかったコーヒーや食べられなかったサンマの内臓、20歳では飲めなかったビールなど、若いころには口にできなかった苦いものはありませんか?
子供や若い時には絶対に食べられなかった苦い物がどうして大人になったら食べられるようになったのか。
「苦みに慣れた」「舌が肥えて苦みを旨味に感じるようになった」などとポジティブに捉えている人も多いかもしれませんが、実は真逆で、身体的にはある器官が少なくなっていると言います。
この器官の名が味の感覚器である『味蕾(みらい)』です。この味蕾の数は大人と子供で比べると、子供の時の方が倍ほど多く、大人になるにつれてどんどん少なくなっていきます。
これには大きな理由があり、子どもは小腸のバリア機能などが十分発達していないため、変なものを食べてしまわないように味蕾が鋭敏になっていると考えられます。
味蕾はもとから備わった自己防衛器官なのです。大人になるにつれて、味や危険なものは学習し、食べなくても毒かどうか事前に認識できるようになるため、味蕾は必要以上にいらなくなり、少しずつ減少していくと考えられています。
味には敏感でいたい
食べられるものが増えるということは、聞いているだけだといいことが多いように聞こえますが、ただ味に対して鈍感になっている可能性も大いにあります。
若いころに苦かったものを、年を重ねても苦いと感じられることが若さを維持している指標になるかもしれませんね。
<近藤 俊/サカナ研究所>