スーパーの小アジパックに毒フグが混入 もし食べてしまっていたら?

スーパーの小アジパックに毒フグが混入 もし食べてしまっていたら?

各地でたびたび発生する「フグが他の魚に混入して売られてしまう」事故。このような際に「絶対に食べないように」との注意勧告が行われますが、もし食べてしまったら命に危険があるようなことはあるのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース編集部)

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アジに「クロサバフグ」が混入

8月23日、愛知県蟹江町のスーパーで販売されたマアジのパックにフグの稚魚1匹が混入するという出来事があり、全国的なニュースとなりました。愛知県の発表によれば、販売されていたマアジの小分けパックを購入した客から「フグが入っている」と店に連絡があり、発覚したということです。

スーパーの小アジパックに毒フグが混入 もし食べてしまっていたら?パックで売られることが多い小アジ(提供:PhotoAC)

その後当該地域の保健所が確認したところ、このアジパックには「クロサバフグ」とみられるフグの稚魚1匹が混入していることが判明しました。

同日この店舗では、同様のアジパックを他にも5つ販売していたそうです。これらのパックを購入した客に向けて、食べないようにとの勧告と、回収の呼びかけが行われました。(『スーパーで販売のアジのパックに『フグの稚魚』 客から「フグが入っている」と連絡あり発覚 5つ未回収』東海テレビ 2021.8.24)

クロサバフグは毒フグ?

クロサバフグはいわゆる「サバフグ」と呼ばれるフグの一種です。全国の沿岸に生息する普通種で、他の食用フグ同様に筋肉は無毒ですが、肝臓や卵巣に強い毒を持っています。

クロサバフグ自体は決してまずくはないフグですが、近縁にシロサバフグという全身無毒のフグがいること、また全身に強毒のあるドクサバフグと酷似していることから、流通に乗ることはあまりないようです。

スーパーの小アジパックに毒フグが混入 もし食べてしまっていたら?クロサバフグ(提供:週刊つりニュース編集部)

クロサバフグの体表の色合いは白と銀を基調とし、背側が黒くなっていて、小型で膨らんでいない状態であれば遠目にはアジに似ていないこともないかもしれません。しかし、よく見ればフグにはアジの最大の特徴である体側の鎧状のうろこ「ゼイゴ」がないので、魚の知識がない人でも判別は可能だといえます。購入した人が違いに気づき、フグの方を除去した可能性は高いのではないかと思います。

もし食べていたら?

さてしかし、今回のようにクロサバフグが混入してしまい、そしてそれを誤食してしまうということは今後も起きないとは限りません。そのような場合、食べた人に命の危険はないのでしょうか。

クロサバフグの内臓は確かに毒性が強く、食べてしまうと中毒の可能性があります。主要毒成分であるテトロドトキシン(いわゆるフグ毒)は摂取するとしびれや呼吸困難等に陥り、大量に食べてしまった場合死に至る可能性もあります。

スーパーの小アジパックに毒フグが混入 もし食べてしまっていたら?肝臓などに強い毒が含まれる(提供:茸本朗)

しかし、今回混入したクロサバフグは見たところかなり小型の稚魚です。クロサバフグ有毒部は10MU/g(1gで10匹のマウスを殺せる強さ)に至るものが報告されていますが、仮にそのレベルの個体だったとしても、今回混入したフグが持つ毒性はサイズ的に20~30MU程度ではないかと考えられます。

一般的な成人男性のテトロドトキシン致死量は3000~20000MUといわれており、今回混入したフグであれば100匹ほど丸呑みしない限りはこの数値に到達することはありません。

だからといって「食べても大丈夫!」なわけでは決してないのでご注意を。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>