環境意識の高まりとともに身近になりつつある「昆虫食」。意外なほど美味しく、また栄養に求む昆虫ですが、食べる際に注意が必要なこともあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「17年ゼミ」が一斉に羽化
先月末より、アメリカ東部でとあるセミが大量に地上に現れ、ニュースとなっています。黒いボディに真っ赤な目と、某特撮ヒーローを彷彿とさせるこのセミは「ブルードX」という名前がつけられています。
ブルードXは周期ゼミと呼ばれるセミの一種で、17年に一度一斉に羽化するため俗に「17年ゼミ」と呼ばれます。日本のセミは6~7年ほど幼虫として地中で過ごすが、その羽化は毎年見られます。しかし周期ゼミは十数年に一度しか目にすることはありません。
一斉に羽化するため、その数はとんでもないものになります。一説によると、今年羽化するブルードXの数は数兆にも上る可能性があるそうです。
セミ料理がブームに
さて折しも現在、アメリカでは「SDGs」の一環として、持続可能な食材としての「昆虫食」に注目が集まっています。牛や豚などの家畜と比べタンパク質生産効率がよく、生息数も非常に多い昆虫は次世代の食材として大きなメリットを持つのです。
今回のブルードXも、食材としての利用が試みられています。セミは筆者もよく食べるのですが、やや殻が固く独特な風味があるものの、味そのものはエビのようでなかなか美味です。
当地では燻製やフリッターにされているほか、刻んでタコスの具にしたり、変わったところでは巻き寿司にも加工されているそうです。味の方もなかなか好評といいます。
甲殻類アレルギーとの関係
しかしその一方で、今回のセミ料理や昆虫食のブームについて、米食品医薬品局(FDA)が懸念と警告を発出しています。それは「甲殻類アレルギーの人はセミ食、昆虫食をするのは避けるべき」というもの。
実は昆虫と甲殻類は同じ「節足動物」というグループに属し、キチン質でできた外骨格で体表を覆っているという点で共通しています。そのため甲殻類にアレルギーを持っている人が昆虫を食べると、同様のアレルギー反応を起こしてしまう可能性があるのです。
魚介類と昆虫はいずれも畜産動物より環境への悪影響が少ないため「SDGsに配慮した食品」と言われ脚光を浴びています。しかしそのリスクもまた共通しているのです。意外なところにある落とし穴に注意が必要ですね。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>