海の中には貝を食べる貝がいるのだとか。どんな生き物か調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhhotoAC)
貝を食べる貝「ツメタガイ」
海の中には数えきれないほど多くの生き物が存在しますが、中には貝を食べるちょっと厄介な貝が存在します。
名前はツメタガイと言い、【吸腔目・タマガイ科・ツメタガイ属】の生物です。
大きさは約5cmほどで、まるでカタツムリのような渦巻きの殻を持っています。
日本では北海道南部以南の水深の浅い砂地の海に生息しているため、潮干狩りの時などで簡単に見つけることが出来ます。
見た目は可愛いけど厄介者
薄く淡い色をしており、丸い貝殻もあって可愛らしいですが、足部が発達しており、伸ばすと貝殻全体を包み込んでしまうくらいの大きさをしています。
そんなツメタガイですが、かわいらしい見た目とは裏腹に実はとっても厄介者として漁師さんから嫌われています。
彼らの主食はアサリやハマグリなどの二枚貝で、食欲旺盛なこともあってか養殖場や潮干狩り場などで食害の原因になってしまっているのです。
ツメタガイが残す痕跡
海で貝殻を拾ったとき、まるでキリで穴を開けたような2mmくらいの綺麗な穴が開いた、アサリなどの二枚貝を見つけることがありませんか?
実はその穴こそ、ツメタガイが二枚貝を食べた痕跡なのです。
ツメタガイはアサリなどを捕まえると、口から酸性の液を分泌して貝殻を溶かし、ヤスリのようにザラザラした歯舌で削って小さな穴を開け、そこから中身を食べてしまいます。
卵は不思議な形
夏頃に砂浜に行くと、直径10cmほどの、砂でできたお茶碗のような不思議な物体が打ち上げられていることがあります。
もし見つけた場合、それはツメタガイの「卵塊」と呼ばれる卵です。
ツメタガイのメスは卵を産む時、砂の中に潜り、粘液を出して砂を固めたものに卵を閉じ込めます。
その際、丸い貝殻の側面を使って砂を押し付けるようにして固めるので、お茶碗のような形ができあがります。
生態系に害を与える外来生物
ツメタガイの仲間の中でもサキグロタマツメタという貝は、東日本や北日本の潮干狩り会場で猛威を振るっています。
このサキグロタマツメタは、もともと東日本や北日本には生息していない外来生物で、2012年に公表された環境省の第4次レッドリストでは絶滅危惧I類に指定されています。
しかし、実は食害を与えているのは中国大陸からやってきた外来種だということ。
もともと日本にいたサキグロタマツメタは食害になることはなく、むしろ絶滅寸前だったのです。
それが1990年ごろから、中国産のアサリを養殖するようになり、その中に混ざってやってきた外来のサキグロタマツメタが日本のアサリを食い漁っているのです。
その食欲はほぼ無限大とも言われ、特に深刻な時は、潮干狩り場が閉鎖に追い込まれてしまうこともあるようです。
別名は干潟のブラックバス
無限の食欲で生態系を壊すことから、外来個体群に属するサキグロタマツメタは、『干潟のブラックバス』と呼ばれています。
駆除は人手に頼るしかなく、駆除しきるのはほとんど不可能だと言われています。
多い時には潮干狩り場で数十万個見つかることもあるそうで、せっかく育てたアサリが殆どサキグロタマツメタに食べられてしまうとなると養殖業者も非常に悲しい現実でしょう。