東日本大震災で甚大な被害を受けた三陸の漁業。他の要因も加わり、水揚げ量は漸減傾向ですが、水揚げ高はむしろ増えているものもあるといいます。
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三陸産毛ガニの利益拡大
10年前の東北沖地震と大津波で甚大な被害を受けた岩手県の三陸沿岸部。震災後の復興活動で漁業設備はかなり復旧してきた一方で、海中環境の変化や温暖化などにより、サンマやサケなど主要魚種の不漁が続いています。
三陸海岸の名産である毛ガニの漁においても、多分にもれず水揚げ量が減少しています。震災前に比べると、その漁は1/3程度しかないそうです。
しかしその一方で、水揚げ高はむしろ向上しているといいます。これはひとえに資源管理の意識によるもの。大きくて単価の高い毛ガニに絞って水揚げし、小さいもののリリースを徹底することで結果的に利益が向上しているのです。(『震災で打撃・・・岩手の毛ガニ漁【#あれから私は】』TBS NEWS 2021.3.9)
漁業資源管理の取り組み
三陸毛ガニ漁に資源管理の考え方が導入されたのは、東日本大震災がきっかけです。被災地漁業復興支援の一環で、漁業先進国・ノルウェーの専門家が招かれ、その資源管理手法や結果について伝えたことが契機となりました。
日本では現在、多くの漁で乱獲がおこっており、それによる資源減少も発生しています。それに対し、ノルウェーでは漁期やサイズなど、漁獲における様々な面に規制をかけ、その上で単価の高い大きなサイズのものだけを漁獲するという方針で漁業を行っています。そのため、資源保護と漁が両立できており、また労働単価も高止まりさせることができているのです。
資源保護と漁業の両立
日本でも、上記の三陸毛ガニ漁以外でも資源管理が功を奏している例があります。有名なのが佐渡島の甘エビ(ホッコクアカエビ)漁で、「資源管理と両立する漁業」が取り入れられ、成功しています。
この漁で導入している資源管理手法は個別割当(IQ)方式というもの。これは、それぞれの魚種ごとに定められた総漁獲可能量(TAC)のうち、設定された漁獲量をそれぞれの漁業者に割り当てるという方法です。