これまでの絶望的状況から一転、ここ2年は豊漁に湧くシラスウナギ漁。しかし、せっかくの豊漁を台無しにしかねない問題が、この漁の背景には存在しています。
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問題だらけのシラスウナギ漁
日本のシラスウナギ漁は24の都府県で行われており、静岡県など主要産地の多くで、その出荷先が指定されています。しかし、漁獲したものの自治体に申告をせず、その分を仲買業者がこっそり買い取り、裏ルートで養殖業者に売るという形の「密漁」が横行しているのです。(『平成31年漁期におけるウナギの持続的利用のための資源管理の推進について』水産庁 2018.10.30)
シラスウナギは不漁が続いた一方、その需要は変わらず高く、そのため価格が高騰し「白いダイヤ」とも呼ばれるようになりました。その結果、密漁が反社会勢力の資金源ともなってきた暗い歴史があります。
その悪いイメージを払拭するため、全国のシラスウナギ仲買業者で構成される「日本シラスウナギ取扱者協議会」が18年に発足しました。シラスウナギを漁獲した場所や時期などを「産地証明書」の形で記録、それを養殖業者に伝え、取引の正常化を図るのが目的です。しかしこれに関して「証明書は第三者による監査が入るわけではないため、ごまかそうと思えば可能」という意見もあるとのことで、実効性には疑問の声が上がっています。(『日本人が知らない「ウナギの闇」どうしてこんなに高くなったのか?』gendai ismedia 2019.7.17)
また、昨年12月にはシラスウナギが「特定水産動植物」に指定されました。これは密漁した場合、他の水産物よりも厳しい罰則が課せられるというものなのですが、しかし現状、密漁の取締事態が強化されているとは言えず、その効果は未知数となっています。
シラスウナギの漁、そしてその流通管理が正常化されるためには、まだクリアしないといけない問題がたくさんあるのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>