生きた『ダイオウイカ』が漂着 気になる味は「美味しくない」可能性大?

生きた『ダイオウイカ』が漂着 気になる味は「美味しくない」可能性大?

島根県の海岸に生きたダイオウイカが流れ着き、話題となっています。「深海に棲む巨大イカ」ということはよく知られていますが、果たして食べることはできるのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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生きたダイオウイカが漂着

島根県出雲市の漁港に、ダイオウイカが漂着し、ネットで話題になっています。発見者からの連絡を受けた近隣の水族館員がダイオウイカを撮影し、その動画は数万件もリツイートされています。(島根県立しまね海洋館アクアス 公式ツイッターアカウント 2021.1.27)

動画では大きさや周囲の様子はわかりませんが、弱々しくもしっかりと足を動かす様子などが確認できます。ダイオウイカの死体の漂着は近年かなり増えているのですが、今回のように生きたまま漂着することはとても珍しいのです。

ダイオウイカの特徴・生態

最近の深海ブームの影響もあり、ダイオウイカは今や最も有名な深海生物のひとつと言って過言ではないかと思います。

「深海の巨大イカ」として知られるこの生物は、触腕を含む体長は10mを超え、同じく深海性のイカであるダイオウホウズキイカとともに、世界最大の無脊椎動物と考えられています。

生きた『ダイオウイカ』が漂着 気になる味は「美味しくない」可能性大?漂着したダイオウイカ(提供:PhotoAC)

主に深海魚や深海性のイカを捕食しており、深海生物の生態ピラミッドの上位に位置する一方で、潜航能力の高い大型のハクジラであるマッコウクジラが天敵となっています。マッコウクジラとダイオウイカの格闘は有名で、胃の中からダイオウイカの一部が発見されたり、表皮にダイオウイカの吸盤の跡が残っている個体が確認されることもよくあるといいます。

西欧のファンタジーにしばしば登場する、大型のタコともイカともつかない怪物「クラーケン」のモデルはダイオウイカである、という説もあります。古くから知られた巨大生物だったようですが、深海生物ということもあり、その生態は現在でもほとんど分かっていません。

気になる味は?

さて、世界で最もイカを好むと言われる我ら日本人としては、どうしても気になってしまうのがその味。刺身にしたら数千人分は取れそうなサイズ感もあり、ダイオウイカが食べられたらいいのにな、と思ったことのある人はきっといるはずです。

実際に「ダイオウイカのスルメ」が作られ、試食会が開催されたこともあります。(『ダイオウイカのお味は?スルメ試食会 富山』日テレnews24 2015.2.22)参加者によると「塩辛い部位もあれば味がしない部位もあった」とのことですが、これはひょっとするとかなり「忖度」した感想と言えるかもしれません。

生きた『ダイオウイカ』が漂着 気になる味は「美味しくない」可能性大?ダイオウイカと同じ味?のカギイカ(提供:茸本朗)

というのも、深海性のイカは、浮力調整のため体内に「塩化アンモニウム」を含んでいることが多く、このダイオウイカも筋肉中に塩化アンモニウムを大量に含んでいるといいます。そのため、塩辛さと酸味・苦味が強く、我々が食用にするイカ類とは似ても似つかない不味さだろうと考えられるのです。

筆者も、以前このような深海イカを食べてみたことがありますが、塩辛さのあとになんとも言えないエグ味があり、さらには口をすぼめてしまうような強烈な酸味が襲ってきて食べるのをやめてしまいました……。

いつの日かダイオウイカも食べてみたいとは思いますが、味の方は期待するつもりはありません……。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>