兵庫・明石沖のマダコ釣りは例年、5月からスタートし、まずは8月いっぱいまで。その後11、12月に再びシーズンを迎えて冬場は休止・・・と言うのがパターンだが、今年は少し違う。3月中旬から本格的に出船する船が増え、マダコがよく釣れていると言う情報が・・・。その理由を専門機関に聞いてみた。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)
専門機関に聞く
その辺りを兵庫県立農林水産技術総合センターの水産技術センター(明石市東二見町)に聞いてみた。
明石沖のマダコ生活史
まず、明石沖のマダコの生活史としては、産卵期が夏の終わりから秋にかけて、2~3カ月と長い期間に渡る。この卵がふ化するのに約1カ月を要し、さらに約1カ月間の浮遊生活をした後に着底する。つまり、卵で生まれてから、海底の生活に至るまでには約2カ月もの月日を要するのだ。
また、最近の説では夏~秋の産卵群に加えて、春の初めに産卵するグループもあるとされているようである。
春産まれと秋産まれ
夏に生まれたマダコは翌年の初夏から漁獲対象となってくるのだが、マダコは比較的高水温を好むので、秋に生まれた個体はそのまま冬に突入し、活性が下がる事が考えられる。そのため、エサを十分に取らず、成長もやや遅い事が考えられるそうだ。
「梅雨の雨を吸って育つ」と言われるのは、本格的な夏を前にして活性が上がり、成長が促進されるのではないだろうか。逆に春生まれ群は、夏場に成長するので比較的成長が早く、その年の秋や冬に漁獲対象のサイズに成長できる。
冬場に釣れない理由
本来、マダコは大きな回遊性を持つ生き物ではなく、水温の変化に伴って、多少の移動にとどまっている事が多いのではないか・・・との事で、冬場に釣れないのは、水温が低すぎて活性が極端に低くなるためエサも取らないので、釣れない・・・と言うのがおおよその見方だ。
今冬にマダコが釣れているのは、やはり海域の高い水温推移が原因ではないか・・・との事。つまり、本来はその海域に居て、活性が低くなるために釣れなかったマダコが、この冬は高活性とはいかないまでも、エサを取るに十分な活性を維持できる水温にとどまった・・・と言うのが正解かもしれない。
シーズン長期化で個体数減少の懸念
温暖化による高水温の影響で早くも釣れ出し、例年より非常に早くからシーズンに突入した明石沖のマダコ。
長らく明石沖のマダコ釣りに親しんできた筆者の心配は「そんなに早くから釣りに行って、本番の夏までに数が減ってしまうのでは?」と言う事だが、さて、今年の夏は多くのマダコたちに会えるのだろうか・・・。
<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>